リスク管理プロセスのリスク測定 / Measuring Risk
最も常用されるリスクの測定法として資産の収益率の変動率(Volatility of the Rate of Return of an Asset)を基本とします。つまり、変動率(Volatility of the Rate)は、収益率の標準偏差率(Standard Deviation of the Rate)となり、ヒストリカル・ボラティリティ(HV: Historical Volatility/歴史波動率)は、過去の収益率の変動情況を反映し、期待収益(Expected Return)との差を計算することで未来を展望します。
期待収益 Expected Return
シナリオ分析(Cenario Analysis)を利用して、ファンドのような金融資産の期待収益率(Expected Retrun)を計算できます。まず、強気市場(Bull market)、安定市場(Stable market)や弱気市場(Bear market)のようなさまざまなシナリオにおけるファンドの期待収益率(Expected returns of the fund)を予測します。その後、それぞれのシナリオの発生率(Probabilities of Occurrence)を設定する。最後に下の公式に基づき、期待収益率(Expected Return)を計算します:
r = Σpiri
Where
r = 期待収益率(Expected Return: 預期回報率)
pi= 発生率(Probability of Occurring: 発生的機会率)
ri = 期待シナリオのもとでの収益(Return of an Expected Scenario: 預期情境下的回報率)
変動率 Volatility
期待収益率(Expected Return)を算出後、標準偏差(Standard Deviation)の公式を利用して変動率(Volatility)を計算することができます。変動率(Volatility)が高ければ高いほど投資リスク(Risk of the Investment)は高くなります。
変動率=標準偏差=√Σpi(ri–r)²
例:
ファンドA、Bが下記の収益率と変動率の場合、収益のシナリオは:
発生率/Probabilities | ファンドAの収益率/Return of Fund A | ファンドBの収益率/Return of Fund B |
---|---|---|
0.2 | 20% | 20% |
0.7 | 25% | 40% |
0.1 | 5% | -10% |
ファンドAの期待収益率(Expected return):
r=(0.2×20%)+(0.7×25%)+(0.1×5%)=22%
ファンドBの期待収益率(Expected return):
r=(0.2×20%)+(0.7×40%)+[0.1x(-10%)]=31%
2つのファンドの変動率(Volatilities)は:
発生率/Probabilities | ファンドAの収益率/Return of Fund A | 変動率/ Volatility pi(ri–r) ² |
ファンドBの収益率/Return of Fund B | 変動率/ Volatility pi(ri–r) ² |
---|---|---|---|---|
0.2 | 20% | 0.8 | 20% | 24.2 |
0.7 | 25% | 6.3 | 40% | 56.7 |
0.1 | 5% | 28.9 | -10% | 168.1 |
36 | 249 |
pi(ri–r)²=発生率(期待シナリオのもとでの収益率-期待収益率)²
ファンドAの変動率を求める。
=0.2(20-22)²=0.8
=0.7(25-22)²=6.3
=0.1(25-5)²=28.9
0.8+6.3+28.9
=36
ファンドAの変動率=√Σpi(ri–r) =√36=6
同じ要領で、
ファンドBの変動率=√249=15.8
シャープ・レシオ Sharpe Ratio
以上の例でわかるように、変動率15.8のファンドBは変動率6のAに比べて収益(Return)は高くなりますが(B>A)、同時にリスク(Risk)が高くなります。しかし、同等のリスクレベルの場合には、どのファンド(Fund)の収益が高くなるか投資家にとって興味をそそる問題でもあります。この質問への回答は、シャープレシオ(Sharpe Ratio)にを根拠に、それは、引き受けたリスクの単位当たりのリスクフリーレート(Risk Free Rate)の資産を収益に反映することになります:
シャープレシオ=(期待収益率-リスクフリーレート)/変動率
Sharpe ratio = (Expected return – Risk free rate) / volatility
リスクフリーレート(Risk Free Rate)を5%と仮定して上記の情況でシャープレシオを求める。
ファンドAのシャープレシオ= (22–5)/6=2.83
ファンドBのシャープレシオ=(31–5)/15.8=1.65
ファンドBの絶対的な収益率(40%を記録)がさらに高いにも関わらず、同一のリスクの水準の下では、ファンドAの収益率はさらに高くなる。(A>B)
その他リスク測定方法 Other Measurements of Risk
その他のリスク測定方法としては以下のようなものが存在ます。
- リスク数値(VaR: Value at Risk/風険数値):
リスク測定の業界標準(Industry benchmark)として、広く銀行や金融機関で使用されており、一定の信頼水準(CL: Confidence levels)の下、市場環境変化の結果(Result of changes in market conditions)として、投資価値の変化(Change in value of an investment)を測る尺度となります。このリスク数値(VaR)の例としては、「保有期間1日あたり99%のVaRは、HKD100万である(The 1-day 99% VaR for the position is HKD1 million)」、つまり1日あたり最大損失(Maximum daily loss)HKD100万が発生してしまう可能性が99%存在することになります。 - ストレス・テスト(Stress test/壓力測試):
リスク数値(VaR)は特定の信頼水準(CL: Confidence levels)の下での最大損失(Maximum loss)を表しているにすぎませんが、そのリスク数値(VaR)より更に大きな損失を発生する可能性がまだ存在します。市場パラメーターに大きな変動が発生したときに、ストレス・テスト(Stress test)は特定の主要な投資パフォーマンスを評価し、リスク数値(VaR)のその不足分を補うことなります。 - オプション感度指数 Option sensitivity measures/期権敏感度指標):
時間(Time)、利率(Rate)、変動率(Volatility)などのような、パラメーターの変化に対するオプション価格の変動幅(Option price changes)を測定します。 - デュレーション(Duration/存続期):
利率(Interest rate)の変化に対する債券価格の変化率(Percentage change in bond prices)を測定するために使用されます。