先物取引とは? / What Are Futures Transactions

先物取引の"先"という日本語の漢字は、ある時刻に対して用いられる際、大変わかりづらいですね。例えば「1年先に生まれた」ここでは時間軸は今の時点から見た"前の過去"。「友人と次に会うのは1年先」ここでは今の時点から見た"後の未来"となり全く対称にある"過去のこと"or"未来のこと"どっちにも使っています。ちなみに同じ漢字を利用する中国語の"先"が持つ意味は今の時点から見た"過去のこと"のみを意味するので、先物と呼ばず、将来的に決められている約束の"期日の貨物"を取引対象としているので期貨と呼ばれています。

さて、先物のことを英語では未来/Futuresと呼ぶことからわかるように取引対象は"未来の物"の方で、結局、先物取引はある商品(以下、原商品)を予め決めた"後の未来"の期日に、その時点から見た"前の過去"の価格で売買/取引することを予め契約を結ぶ取引なのです。ただ、日本の先物をいう呼称は"予め"を意味する日本語の"先に"という時刻の"前の過去"に注目して命名したかもしれませんが…。いずれにせよ時刻が多いに関係するのが、先物取引なのです。

反対売買 / Offsetting (equal and opposite) trade

契約の買方は、期限日,期日/Expiration dateに売り手から約定価格/Contract priceで原資産,対象商品/Underlying commodityを購入する義務を負います。
一方、契約の売方は、期日に約定価格で原資産を買い手に売却する義務があります。ただし、いずれの場合も、契約の決済を期日まで待つ必要はなく、オフセット(反対売買)取引/Offsetting (equal and opposite) tradeを開始することにより、有効期限前であればいつでも先物契約を解消/Closeすることができます。具体的には、買方は買建てを転売/Resells a contractし、売り手は売建てを買い戻し/Buys back a contractます。
先物契約の買方は、対象商品価格が上昇してくれば利益が、下落すれば損失が発生します。当初の予想に反して相場が下落したとしても、早期に反対売買(転売)を行い契約を解消すれば、損失の拡大を抑えることができます。売方は、対象商品価格が下落してくれば利益が、上昇すれば損失が発生します。当初の予想に反して相場が上昇したとしても、早期に反対売買(買戻し)を行い契約を解消すれば、損失の拡大を抑えることができるのです。

差金と受渡決済 / Net cash & Delivery settlement

先物取引は、大きく原資産と期限日の決済方法/Method of settlementの相違により有価証券指数等先物取引と有価証券先物取引の以下2つに大別される。

まず、先物取引の有価証券指数等先物取引には株価指数/Share price indexのような抽象的/Abstractな数値を原資産を取引するものがあり、代表的な例としては、日経平均株価先物/Nikkei Stock Average Futures、東証株価指数(TOPIX)先物/Tokyo Stock Price Index (TOPIX) Futures、JPX日経インデックス400先物/JPX-Nikkei Index 400 Futuresなどが株価指数先物取引の対象商品の代表的なものです。これは、長期国債の先物と違って期限日に受渡しのできる現物がなく、株式投資のように買った株の代金をその都度支払う必要はありませんので、抽象的な数値を原資産の先物取引は期限日の最終決済においても、期限日前に行われる反対売買と同様な差金決済,ネットキャッシュ決済/Net cash settlementに頼らざる得ないことになります。
また、株価指数先物取引では、最終取引日/Final trading dayまでに決済が行われなかった場合、翌日(期限日)/Next day (the expiration date)に特別清算指数/Special quotation (SQ)で自動的に相殺取引が行われ(取引最終日と期限日とはズレがあります)、取引者の損益が確定することになります。

次に、有価証券先物取引として、長期日本国債先物/JGBなどの先物取引の期限日までに差金決済されなかった契約は、受渡適格銘柄として大阪取引所/Osaka Exchangeが指定した銘柄とその代金を交換することで決済され、特にこの決済方法を受渡決済/Delivery settlementと呼び、決済されるものを受渡債券と呼ばれています。
しかし、決定権のある売方は受け渡す債券を通常の場合、複数選択することができますが、それぞれ種類によって価格が異なるため、両者の価値をなんらかの基準によって同一になるように調整を行う必要があります。このための交換比率をConversion factors:CFを予め定めています。具体的には、通常、受渡債券の選択は、決定権のある売り手に有利であることから、Least expensive bond/最も安価な債券を選択します。ここで言う最も安価な債券とは、「Futures price × Conversion factor – Spot price/先物価格 × (受渡銘柄の)交換比率 – (受渡銘柄の)現物市場価格」の式で算出される金額が最も小さい債券を指し、先物取引の買い手が支払うべき受渡し価格は、この計算式で算出されます。

また、貴金属や農産物を原資産とする商品先物取引(商品関連市場デリバティブ取引/Commodity-related market derivatives transactions)の一部の銘柄では、期限日に受渡し決済を選択することができますが、実際の取引ではこの決済方法を選択する投資家は少なく、ほとんどの取引が差金決済で成立しています。また、受渡決済を選択できない銘柄については、最終決済価格を基準に差金決済が行われています。

投資家は、締結した契約の履行を確保するために、先物・オプション市場で発生しうるリスク(損失見込額)を計算し、担保として提供される現金や有価証券である「証拠金」(商品関連市場デリバティブ取引の場合、倉庫証券など商品を預かる倉庫会社が発行する証書や手形もその担保として使用できる)を預けることで先物取引を行うことができる。
先物取引には、以下のような特徴がある。

オフセット(反対)取引はいつでも実行可 / An Offsetting (Equal and Opposite) Trade Can Be Executed at Any Time

対象商品の価格が上昇すれば、先物をLong Position/買建てしているロングの人は儲かり先物をShort Position/売持ちしているショートの人は損をする。逆に価格が下がれば、ロングポジションの人は損をしショートポジションの人の人は儲かる。いずれの場合も、先物契約者が想定した方向と反対の方向に市場が動いてしまった場合、反対売買を行い、元の契約を決済することで損失を限定することができるのです。

先物取引の決済方法 / Methods of Settling Futures Transactions

先物取引の決済方法には、次の反対売買/Offsetting Tradesと決済/Settlementの2通りがある。

反対売買 / Offsetting Trades

取引最終日までに反対売買を行うことで、先物取引を決済することができる。すなわち、買建て(買方)/Longの場合は転売/Resell contractで、売建て(売方)/Shortの場合は買戻し/Buy back contractで決済する。

決済 / Settlement
現物受渡しの可能な商品な場合 / If the underlying commodity is deliverable

この決済方法をDelivery settlement/受渡決済と言い、中国語では実物交割と呼ばれています。先物取引の買方は売方に約定金額を支払い、売方は買方に現物を受け渡します。後述する差金決済が簡単なので、利用は少ないが(現物がある)長期国債先物や金などで受渡決済が利用されています。
先物の買い方 →現金/Cash→ 先物の売り方
先物の買い方 ←現物/Spot commodity← 先物の売り方

現物受渡しのできない商品の場合 / If the underlying commodity is not deliverable

この決済方法を差金決済/Cash settlementと言い、中国語では現金交割と呼ばれています。約定価格/Contract priceと最終決済価格/Final settlement priceとの差額を受け渡して行う。
買方: 約定価格>最終決済価格 の場合
先物の買い方 →差金/Cash in difference→ 先物の売り方

買方: 約定価格<最終決済価格 の場合
先物の買い方 ←差金/Cash in difference← 先物の売り方
日経平均先物で利益と損失

信用取引との差異 / Difference from Margin Trading

先物取引と株式市場の信用取引を比較すると、証拠金/Marginを必要とする点、時価評価方式/Mark-to-market systemを採用している点など、類似点がある。しかし、以下の点で基本的な性質が全く異なる。

先物取引には貸借関係はない There Is No Borrowing and Lending Relationship in Futures Transactions

信用取引では、証券会社や証券金融会社が株の買い手におカネを貸したり、売り手に株を貸したりして、それを現物株の取引に利用します。これに対し、先物取引では、買方、売方のどちらにも信用取引におけるような貸借関係は存在しません。そのおかげで(笑)、信用取引に比べれば仕組みが単純です。

先物取引では、先物の価格は現物取引とは無関係に決定 In Futures Transactions, Futures Prices Are Determined Independently from Spot Transactions

信用取引では、上記のように貸し借りした資金や株式/Funds or Sharesを使って、他の現物取引/Spot transactionと全く同じように現物市場/Spot marketで取引を行い、信用取引でも現物取引でも同じ価格となります。現物市場の価格で取引それぞれの市場で異なる価格が設定されるため、2つの市場の間で裁定が働いてしまう。さらに、先物取引の場合、同じ原資産でも限月(受渡月)/Contract month (Delivery month)別に価格付けが行われるので、同種の先物でも異なる限月のものは独立して取引が行われる。
つまり、信用取引は、通常の現物取引と同様に現物市場で行われるので、信用取引は、フォワード取引と同様に、広義の現物取引に含まれことになります。