円安と同様、人民元にも通貨安圧力
人民元の預金者を獲得するため、中国国内の銀行は近年相次いで高金利による預金者の囲い込みに専念してきた。中国政府の政策金利を引き下げにともない、現地の人民元の預金利回りはすでに頭打ちになっていると見られ、この先高金利から下落する可能性がある。為替改革以来、人民元はすくなからず変動が続いており、多くの預金者と投資家が、人民元の大きな人民元安はありえないと見ている。実際のところは、いかなる国の通貨であろうとも通貨安の可能性は拭いきれず、特に経済が低調傾向にある場合には、通貨価値が下落するのがセオリーとなり可能性が高まるため、人民元が大きく下落するはずが無いとみるのは非現実的であろう。
かねてより中国経済が不調となる際には、中国人民銀行(中央銀行)による「放水」(量的金融緩和)の可能性に焦点が集まってきたが、中央政府がインフラ建設投資を拡大させるか否などが焦点となるなか中で、人民元の為替相場は往々にして見落とされがちとなっている。事実上、経済を調整するには通貨はそのルーツの一つであり、直近の経済環境の下で、中国が人民元を適度に引き下げる可能性は大いにある。加えて、李克強首相は過去に何度も中国経済の市場化促進を掲げており、市場化という目標を実現するには、経済サイクルに合わせた人民元の上下変動を容認する事も必要となってくる。
経済要因が人民元安圧力をもたらしたほか、中国の近年の大量な「放水」もまた人民元安を誘発する要因となっている。リーマンショック後、欧米日等の国々では相次いで量的緩和を実施し、経済のはどめとなるよう、中国もまた量的緩和の流れに加わったのだが、あるデータによると、中国の通貨供給量(M2)は今年10月末で120兆元にまで達しており、欧米日を上回っているだけでなく、2007年と比較しても80兆元の増加となっているのだ。通貨供給量(M2)が急増しているにも関わらず、中国本土経済は不調に陥っており、資金が需要のあるレイヤーまで届いていない事が反映されている。