原油価格の複雑なカラクリ
ここ数カ月、原油の大幅安となっている。原油価格は巨大な下落幅を累積しているものの、価格の変動には多くの複雑な要因が影響しているため、現段階ではいつ底打ちとなるか予想が非常に難しい状況となっている。多くの人は急激な原油安の要因を新興国を含め需要後退とドル高によるものだと見ているが、筆者は上述の要因を、あくまで原油価格を下落させる要因のあくまでも一部であると見ている。
今年の2014年に入ってから、米国をはじめとする西側諸国は続けざまにロシアへの制裁にはじまり、ウクライナ問題の罰としてロシア経済にダメージを与えており、十分な国家の財政を確保するために、ロシアはエネルギー輸出の拡大に迫られている。ロシアは世界の主要な産油国となるべく、エネルギーの輸出を拡大させることで価格への下方圧力を回避するはずだ。
シェールガスと原油
近年、世界の多くの国々がシェールガスの開発投資に力を注ぎ、新エネルギーの台頭によって産油国の利益が損なわれてきた。現在、1バレルあたりのシェールガスの生産コストは約70~75米ドルとなっており、もし原油価格が75ドルを上回る見通しとなれば、よりシェールガスの利用が選択されさらに普及及することになるだろう。シェールガスと競合する以上、産油国にとって原油価格の下落は当然といえ、最近OPECがあえて減産しないと表明したことからも伺える。
OPECの実質的な支配者であるサウジアラビアでは、21バレルの石油生産コストが約29ドルで、現在の原油価格を60ドルあまりで見積もっても、サウジアラビアは今後も原油生産で利益を見込めるのである。
利益を見込めるとはいえ、サウジアラビアが原油価格を継続的に下落させたいということではなく、過度な原油価格の下落は国の社会保障費の支出能力に圧力が加わる可能性が高まるために下落を歓迎するわけではない。
中東の社会保障支出との関係
中東の国々では国民に手厚い福利厚生を提供しており、福祉の維持のため、十分な財源の確保が必須となる。ある分析によれば、原油価格が100ドルに達した場合、サウジアラビアは十分な財政資源を確保でき一定の歳出を維持できるとしている。しかし現在の原油価格は100ドルを遥かに下回っており、サウジアラビアが歳出のバランスを維持できなくなれば、政情に危険信号がともる可能性があるのだ。
原油価格に影響を与える要因はかなり複雑なカラクリがあるため、石油関連商品の扱いには十分に注意が必要だ。