アービトラージの投機リスク
上海取引所と重複上場している一部の香港株式銘柄が投資の対象となっており、大幅なAH価格差を狙ったアービトラージ(Arbitrage;裁定取引)が行われていると推測される。割安であるからといって一般投資家の安易な追随は禁物で大きなロス(損失)を招いてしまう。 そもそもA株とH株はそれぞれ独立したマーケットで取引されており、両方の株式市場において相互に連動していない上、中国本土と香港の投資家はマーケットや企業の材料に対して異なる見解を持つため、同一の銘柄であっても、それぞれの株式市場で価格差が発生してしまうのは正常な現象であると言えよう。 相互の上場株式の売買注文を取り次げる「滬港通」(上海-香港・ストック・コネクト)」が近づくにつれて、A株H株の価格差が縮まることが予想されている。 しかし、最近高騰しているH株を全体的に眺めて見みると、一部のA株は深セン証券取引所の上場銘柄であり、その上海香港間の滬港通とはあまり関連していないため、投機筋は注意するべきであろう。
A株とH株の均衡化
相互の上場株式の売買注文を取り次げる「滬港通」によるA株H株間の価格差の縮まったといえども、かえって投機的リスクを招いているのだろうか。AH価格差は三つのパターンで縮まりを見せている。 まず第1に、一方の株式市場において割高となっている株価に一定期間変化が無く、もう一方の株式市場において割安となっている株価が反発し一方に近づき平衡となる場合。 反対の第2としては、割安の株価に変化が無く、割高なもう一方が下落して価格が近づき平衡となる場合。 そして最後の第3として、割安な一方が上昇すると同時に、割高な一方も下落に転じている場合だ。これら3パターンの中で、どれが合理的な時価を表し価格差が均衡に向かっているかの判断は実に難しいといってよい。 今のところ、多くの投資家が最初の第1の方法の割安な銘柄が上昇し価格差が均衡へとむかう事を想定するであろうが、もし市場の動きが別のパターンへと動いたときには、割安な銘柄を追随してきた者は、塩漬け株の保有していますことになるであろう。
「滬港通」(上海-香港・ストック・コネクト)後
たとえ相互の上場株式の売買注文を取り次げる「滬港通」がスタートしても、AH価格差が全く無くなるわけではない。 なぜなら、相互に乗り合いするのは資金面のみで、株式自体が行き来し相互に流通する事はないからだ。つまり、A株・H株は引き続きそれぞれ独立したマーケットで需要と供給が存在するという事だ。 また、両社の株式市場ともに別個の法規や規制の制限を受け、加えて、「滬港通」後もそれぞれの市場の投資家は、引き続き株価材料に対する見方の相違を保つため、同一の企業の銘柄であっても、今後も引き続きA株・H株間で価格差が生じる可能性が大いにある。 つまり、AH株間の価格差の発生が企業のファンダメンタルによるものか否かは直接的に関係は無く、長期的に見れば、価格差が要因となって当該銘柄のトレンドに影響を与えることは無いと言えよう。