中国は慎重な解決を迫られる
中国本土の4月小売売上高と1~4月固定資産投資はそれぞれ前年比11.9%増、17.3%増と、いずれも市場予想を下回り、中国経済の下方圧力が依然大きい事が反映されている。注意すべきは、4月の中国CPI(消費者物価指数)が前年比1.8%増にとどまったと発表されており、このデータが内需の減速を反映している事に加え、本土のデフレ圧力も示している点だ。世界の主要国はインフレターゲットを2~3%の水準に設定していることから、インフレ率2%未満というのは赤信号がともるレベルだ。デフレ圧力の増加に直面し、ある分析では中国人民銀行(中央銀行)が下半期に預金準備率の引き下げや、利下げに踏み切る可能性を伝えている。
通常、インフレ圧力が小さく、且つ景気の下振れリスクが有る場合、政府の財政•金融政策でリスクに対抗する態勢だが、近年の4兆元規模の救済措置がもたらした後遺症を依然解決できていないことを鑑みれば、例え金融緩和策の実施でデフレの脅威に対抗したくとも、中央銀行の余力や柔軟性には限界がある。現行の金融政策の大幅変更が難しい以上、財政政策での緩和のみ今後の経済を刺激する重点措置となろう。少し前には、国有企業である中国鉄道総公司が今年の鉄道投資の更なる拡大を発表しており、インフラ建設によって経済を支える一方で、政府も企業の支援に焦点を当てたより多くの対策を講じて行くと見られる。
構造改革を深める過程で経済が圧力を受けるのは否定できない事実だ。改革のご褒美が得られるまで、中国本土経済はまだ苦しい時期を過ごさねばならない。また、国内問題の着実な解決に加え、国外からの要因が中国に及ぼす影響も軽視できない。最近、中国はベトナムやフィリピンを相手に南シナ海問題を再燃させており、もし紛争がヒートアップすれば、その勢いに乗じて資金が中国を含むアジア太平洋エリアから流出する可能性が高まろう。また、米国は積極的にアジア国家を懐柔し「中国封じ込め」を図り、これに対抗し中国はロシアとの関係を積極的に強化している事から、地政学的要因が中国の経済成長における潜在的リスクとなっている。