ワールドカップ開催と経済
ブラジルでは2カ月後のワールドカップ開催が迫る。ワールドカップ効果が疲弊したブラジル経済を刺激できるか否か、多くの投資家が注目している。ワールドカップ開催に向けて、ブラジル政府はインフラ整備や建設事業を盛んに行い、施設建設だけですでに38億米ドル近くの支出となり、この金額は当初の予算を遥かに上回っている。このほか、政府はワールドカップの特需に対応するべく国内の多くの空港で拡張工事も行っている。政府がインフラや施設の整備に多大な費用をばらまいているものの、進捗状況や品質水準が懸念されている。少し前の報道では、試合会場施設の水漏れ問題や、多くの空港の拡張工事完了がワールドカップ終了後となってしまう可能性が伝えられており、ワールドカップ開催時の観光客受入能力に多大な影響が出ると見られる。もしインフラ及び施設が整備できなかった場合、ワールドカップがブラジルにもたらすと見られていたリターンは期待通りとは行かないだろう。
インフレと経済弱化の影響を同時に受ける中、ブラジル国民の不満は日増しに高まっており、反対デモが相次いでいる。ある調査では、インタビューを受けたブラジル人の多くが政府によるバラマキに反対しており、国民は政府のリソースである税金を貧困問題改善に用いるべきだと考えている。ブラジルでは所得格差問題が深刻化しており、富裕層と貧困層の収入差は100倍を越える。このほか、政府の歳入はGDPの3割余りに相等し、中産階級への圧力は極めて大きい。国民の不満が高まり社会全体が揺らいでいるため、個人の身の安全が脅威に晒される可能性が懸念される事から、外国人旅行客のワールドカップ観戦や観光のためにブラジルへ来ようとする意欲にダメージを受ける可能性がある。 上述のような様々な問題に巻き込まれるため、今回のワールドカップの経済効果に対し過度な期待を寄せないほうが良いだろう。しかし、もしブラジルがワールドカップで優勝した場合、歓喜情緒がブラジル経済の短期パフォーマンスにとって好材料となろう。ある分析では、大規模なスポーツイベントで優勝を納めた国家では、喜びに沸く雰囲気が社会的結束を後押しし、短期的な経済蜜月期をもたらすと示している。つまり、ブラジルの試合成績如何が現地経済に一定の影響を及ぼすということだ。