死亡税の相続税
遺産税いわゆる相続税とは死亡した後に、残された財産に課税される税であることから香港では“死亡税”とも呼ばる。近代の遺産税はオランダが起源で、その後、米国、イギリス、日本などの国々でも次々と遺産税を課税するようにった。社会全体にとっては、遺産税が徴収されることにより、社会における富の均衡化を図り、財政収入を増加させることが可能となる。
日本では、遺産税は相続税制として施行されており、被相続人ではなく、相続人が相続する財産に対して課税される。課税対象は比較的広範囲で、不動産、現金、証券、生命保険や、高価な工芸品などの投資資産も含まれる。税率は10%から最高50%で、課税され遺産が多くなるほど税率が高くなる累進課税方式となっている(それぞれ対象となる減免額の差し引きは計算表に表示)。税率が割高に感じるが、同時に控除額も高めに設定されており、もしも夫が亡くなって、相続人が妻と子供一人の場合、基礎控除額は4200万円(3000万円+600万円×相続人の数)となり、これを超過する部分に対し、該当する税率が適用され納税額が決まる。
香港は1932年から2006年に遺産税が課せられていた。税率は5~20%の範囲で、かつ香港に無い財産に対しての課税は無く、免税点(控除額)も750万香港ドルと、日本よりも高く設定されていた。2006年2月にこの遺産税が正式に廃止され、これを受けて租税回避を目的とした移民が香港に多く流入することになった。
最近では、中国本土にて遺産税の導入が開始されるというニュースが見られ、多くの議論がされている。法案によると、遺産税は超過累進課税方式で遺産額毎に異なる税率を施行され、80万~200万元の部分は20%、1000万元を上回る部分は税率50%(それぞれ対象となる減免額の差し引きは計算表に表示)。免税点はたったの80万人民元となっており、日本等の諸外国と比べ低い設定となっている。
この低い免税点が大部分の家庭に負担が圧し掛かり、貧富の格差を縮小する目的が実現できないどころか、更に多くの富裕層が海外への移住を強いられるのではと、多くの中国国民が感じているほか注目すべきは、中国本土では生命保険が課税対象に含まれることが無いという点である。なので租税回避のためにわざわざ海外へ移住せずとも、生命保険の保険証券を購入する選択も可能なのだ。
今後より多くの中国本土からの旅行者が、成熟した保険業界を有する香港に足を運び、生命保険を購入し、相続税を回避するに違いないだろう。
遺産額(日本円) | 日本 | 遺産額(人民元) | 中国 | ||
課税対象額 | 税率 | 控除額 | 課税対象額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|---|---|---|
<10,000,000 | 10% | <800,000 | 0% | 0 | |
<30,000,000 | 15% | 500,000 | 800,000-2,000,000 | 20% | 50,000 |
<50,000,000 | 20% | 2,000,000 | 2,000,000-5,000,000 | 30% | 250,000 |
<100,000,000 | 30% | 7,000,000 | 5,000,000-10,000,000 | 40% | 750,000 |
<300,000,000 | 40% | 17,000,000 | >10,000,000 | 50% | 1,750,000 |
>300,000,000 | 50% | 47,000,000 | |||
計算方法 遺産総額:100,000,000 法定相続人:2人 課税対象額:100,000,000-(30,000,000+6,000,000×2)=58,000,000 相続税:58,000,000×30%-7,000,000=10,400,000* *2015年1月1日から適用される改正後の税率です。 *その他の特別控除等は含みません。具体的な税額は該当国の税務機関にご確認ください。 | 計算方法 遺産総額:10,000,000 (2,000,000-800,000)x20%-50,000=190,000 (5,000,000-2,000,000)x30%-250,000=650,000 (10,000,000-5,000,000)x40%-750,000=1,250,000 遺産税:190,000+650,000+1,250,000=2,090,000* *その他の特別控除等は含みません。具体的な税額は該当国の税務機関にご確認ください。 |