撤退の難題に直面するイエレン
大方の予想通りイエレン氏が、バーナンキ氏の後を引き継いで、次期FRB議長に就任することが決定した。イエレン氏が以前からハト派(穏健派)だと見なされていることや、緩和策縮小が経済にもたらす影響を非常に重視していることから、市場はイエレン氏が早急に緩和策撤退に踏み切る可能性は低いと見ている。
グローバル金融市場にとって、米国が早急に緩和策を撤退しないことは好材料視され、しばらくは資産市場から資金流出の懸念が後退。事実、米国が緩和策撤退に踏み切るか否かの肝心なポイントは経済成長のパフォーマンス如何による。米国の近月の経済状況から見て、現在FRBが緩和策撤退に踏み切る必要性は確実に無い。
FRBのグリーンスパン元議長とバーナンキ現議長は、両者とも在任中に前例の無い難題に直面している。グリーンスパン氏は「9.11」の同時多発テロがもたらした経済危機を対処し、バーナンキ氏は07年の世界金融危機を対処した。またイエレン次期議長においても、同様に前例の無い難題に直面する。世界的に見ても、量的緩和策の撤退は前例が無く、言い換えれば、イエレン氏が緩和策撤退に踏み切る場合、すぐさま予測し難い局面に直面するという事だ。
このほか、近年民主、共和両党間では予算及び債務上限問題について常々争いが勃発しており、2党間の政治力争いが米国経済に多くの不確定要素をもたらしていることから、目下の政治環境はイエレン氏の量的緩和策における采配をより困難な状況にしている。
来年、米国議会では中間選挙が行われる予定で、この選挙が次回大統領選の前哨戦になると見られている。イエレン氏はオバマ大統領の指名であることから、イエレン氏が来年の中間選挙まで現行の量的緩和策を維持できるか否かが民主党の選挙情勢に影響を与えるのはやむを得ない。言い換えれば、現時点での市場予測では、来年一年間のほとんどの期間において緩和策撤退が行われない可能性が高いと見られている。
事実上、FRBはすでに本年と来年の経済成長予想を引き下げていることから、来年まで米国が緩和策撤退に踏み切る可能性は決して高くない。FRBでは近いうちに新たな議会が開かれると見られ、当局が米国の最新の景気状況をどのように分析するのか要注目。