経済低迷と緩和策撤退は資本逃避を誘発
近日、新興国市場では資本逃避が見られ、インドネシアやタイのなどの株式市場が急落、またインドルピーも顕著に下落している。
今回の資本逃避(Capital flight)をもたらした原因は2つある。
第一に新興国経済が弱体化していること、そして第二に米FRBの緩和策撤退への懸念が上昇していることが挙げられる。新興国経済の成長率は低くはない水準を維持しているが、成長速度では減速傾向が現れている。比べてみると、米国や欧州、日本の3エリアの経済の方が継続して回復トレンドを見せている。一方が減速し一方が回復する状況で、新興国の資産は次第に魅力を失い、現状では再び資本が成熟国へと投じられている。
緩和策撤退の懸念についは、米国の最新インフレ率が2%へ上昇しており、インフレ圧力の激化を受けて市場が米FRBによる緩和策撤退を懸念を加速させている。
近日、米国の10年物国債利回りが2.8%以上の水準へ上昇しており、緩和策撤退に対する懸念の再加熱が反映されている。米FRBによる量的緩和政策の実施は全世界の資産市場へ有り余る流動性を提供してきたため、ひとたび米国が緩和策の撤退に踏み切れば、流動性は否応無しに減少し、その結果、資産市場はサポートを失うと見られる。
緩和策撤退がもたらす衝撃を和らげるため、投資家たちが政策撤退前にできるだけ資産の持ち高を減らす選択をすることは大いに有り得ることだ。資本逃避の流れがどれくらい続くのか、どれ程の規模となってしまうのか、米国債利回りの動き及びFRBによる緩和策撤退に関する発言は絶対的影響力をはらんでいる。
資本逃避の脅威に直面しているものの、深刻な金融危機に陥る可能性は低いと予想される。98年のアジア金融危機を経て、アジア各国は財政の改善に力を尽くしてきたため、債務は全体的に低水準に抑えられている。
インドネシア及びタイの昨年の債務はそれぞれGDPの25%と41.6%程度となっており、欧州PIIGS5カ国や日本及び米国と比較して、インドネシアやタイの財政状況は非常に健全であると言える。しかし、資本逃避の流れが新興国の資産価格に深刻な下落をもたらす可能性に投資家は今後も注意が必要だ。もし大幅下落となった場合、関連国経済は不況(Recession)に突入し、同時に金融市場への震度は更に激化するだろう。