金の上昇相場はしばし見込めず
金相場が大暴落を起こしている。世界中の中央銀行が大量に「放水」(紙幣増刷)を続けているため、金相場上昇を期待していた投資家の失望をかったと見られる。実は、中央銀行が放水の是非と、金相場への特定の関連性は存在しない。資金流入の有無が資産価格の上昇・下落の方に大きくが関係している。金は数ある資産うちのたった一種であり、資金流入が無い場合、金価格はすぐさま下落し上昇しにくくなる。明らかに、金は投資家にとって寵児ではなくなり、投資家が短期間の内に再び金に注目する機会は少ないと予想する。
そもそも金は従来からリスク回避ツールである。
世界をぐるりと見渡せば、市場におけるリスク回避へのマインドは決して高まってはいない。米国では、現地経済が好調でも不調でも、影響なく米国株はひたすら新高値を更新しており、市場はプラスのマインドを維持していることがわかる。欧州はというと、少し前のキプロス危機が一時的に市場に懸念を与えたものの、ユーロ圏各国やIMF(国際通貨基金)などの組織がキプロス問題を放置しなかったことから、市場の深い信用を得たため、キプロス危機はちょっとした「騒音」をもたらしただけで済んだ。
欧米の状況が今のところ市場のリスク回避マインドを触発していないことに加え、朝鮮半島情勢の緊迫及び中国本土におけるH7N9(新型鳥インフルエンザ)の発生もリスク回避の情緒の火種とはなっておらず、万が一本当に北朝鮮が韓国への攻撃を展開した場合、あるいは、中国本土の鳥インフルエンザが感染者数を拡大してしまった場合、市場のリスク回避へとようやく高まってくるだろう。
世界の中央銀行による「放水」やインフレ圧力の上昇、これらは以前の金投資への根拠となっていた。しかし、世界的な資金氾濫の状況下で、全世界のインフレ圧力はまだ高まっていない。米国、ユーロ圏、中国および日本のインフレ率はそれぞれ2%、1.7%、2.1%および-0.7%となっており、インフレ圧力が緩やかであるどころかデフレの可能性さえ見え隠れする。こういった状況では、金購入でインフレにヘッジしようとする根拠は成り立たない。加えて、日本の大規模な量的緩和はすでに日本円を「雪崩」式に下落させており、ドル高への流れもまた別の形で金相場のパフォーマンスにとって不利となっている。