資金流入の急増の影響
両会期間を終え、中国政府から市場が予想されていたような新たな経済発展計画が未だに発表されていない。これはおそらく不動産価格の高止まりしていることや、インフレ圧力を取り除けていない等の対応を要する問題と関係していると見られる。
問題が不動産市場なのかインフレなのかは問わず、すべては過剰な資金が発端となっている。
昨年の第2四半期から現在に至るまで、中国本土の社会融資総量はすでに17兆人民元を超え過去最高額となり、融資市場は急激に膨張していることを反映している。加えて、外貨準備高は近月と比べまたもや著しい増加となっており、中国に投機的資金が流れ込んでいるのは明らかだ。
資金が氾濫するなか、しばらく中国政府の大規模な経済発展計画の実施は難しい。ひとたび計画が打ち出すと、資金過剰の情況がさらなる悪化をたどる可能性が高く、不動産市場調整およびに物価の抑制に不利な影響を生む。言い方を変えれば、市場が期待を寄せる都市化政策は資金氾濫の情況が改善された後に、ようやくお目見えとなる可能性が高い。
中国人民銀行は何度もリバースレポを実施しているその目的はまさに大量に出回る資金の吸収が目的だ。
リーマンショック後、中国政府は4兆人民元を投じて市場救済措置を行った。その結果社会融資総量が拡大し2010年の初めに14兆人民元を上回ってしまった。信用膨張が進むなか、経済は自然と順調に回復成長してきたが、過剰な生産能力や物価上昇、不動産市場高騰などの問題も引き起こしてしまった。現在の社会融資総量は2010年時よりも更に拡大している。それゆえに、上述の問題解決が難しいだけでなく、さらなる悪化の道を辿る可能性は非常に高い。
中国政府は14兆人民元もの社会融資総量が多くの問題を誘発したことを受けて、新たに金融緊縮措置を実施し、2012年初めに12兆人民元まで引き下げたが、信用収縮が代わりにもたらした結果は経済成長に限り見えてきた。全体的に中国政府が生産能力過剰などの構造問題を解決するには、経済成長を犠牲にしたうえで、金融引き締めの実施が必須になるということだ。中国本土は今なお「一放就乱、一乱就收、一收就死(緩和すれば乱れ、乱れれば引き締め、引き締めれば死ぬ)」という困難な局面から抜け出せていない。どのように両者のバランスを図っていくのかが、新政権に突き付けられた挑戦だ。