米国株の上昇トレンド
米国では2月の雇用統計で非農業部門雇用者数が23万6千人増となり市場予測を大幅に上回った。失業率は前月比0.2ポイント下落の7.7%となっている。プラスの面から考えれば、好調な雇用統計結果は米国経済の回復基調加速を反映しており、企業にとって好材料となるはずだ。しかし、米国労働市場の力強い回復は、FRBによるQE3早期撤退の懸念を誘発し、米国株だけでなく世界の株式市場に不安材料となる可能性もある。
リーマンショック後、世界各国で多くの中央銀行が積極的に量的緩和を推進し、近年における資産市場は投機的資金の氾濫によってとうにねじ曲げられてきた。ファンダメンタルズが資産価値上昇を促す最も重要な要因というわけでは無くなってしまったため、ひとたびFRBが早期に「金融引締め」を行えば、全世界の資産価格が大暴落すると予想できる。当然、ひと月分の雇用統計では完全な実状を反映しきれないため、この先2~3カ月の雇用統計がポイントとなってくる。もし統計結果が持続的に力強い数値を見せた場合、懸念が深まり、資産市場は大激震に見舞われてしまう可能性がある。
米国株は連続して高値を更新しているが、上昇トレンドがすでに頭打ちの段階に入っていることに注意が必要だ。ある報道によると、NY証券取引所の証拠金口座残高はここ3年の最低水準へ低下しており、企業管理層の持ち株状況の売買比率がまさに歴史的低水準へ下落していることを反映している。株価が50日線を上回る比率も同様に大幅に下落しており、米国株の強含みに警戒シグナルが鳴らされた。シグナルが鳴り響いた後、米国株がすぐさま下落せずとも、高値更新のリスクに注意すべきである。
米国はすでに歳出強制削減制度を発動し、民主・共和両党はいつもまでも政局の利益のため国民の利益を犠牲にしている。これに対し、株式市場ではまだ大した反応が見られないのは、投資家たちの懸念を抱いていないから? それとも、投資家がトレンドにトラップを仕掛けている最中なのだろうか? ワシントン政府の手中にある資金は今月27日に使い果たしてしまう。つまり、今月27日が「財政の崖」のデッドラインということだ。もしデッドラインまでに財政計画の合意に民主・共和両党が達しなければ、米国回復の勢いが阻まれ、米国株は調整展開となる可能がある。