イタリア政局混迷で欧州危機
イタリアの選挙結果から、緊縮策実施の中道左派連合による下院の過半数支配が明らかとなった。
しかし上院では過半数の議席を確保できず、たとえ暫定内閣としてモンティ前首相派を足しても過半数に達することができない。イタリアの法例によれば、法律の制定には上下両院を通過する必要があるが、今回両院の選挙結果により上下院のねじれが出現することとなった。
目下、財政の緊縮策が実行できない可能性が高く継続できるか否かは、欧州債務危機が再び悪化する可能性にも関係してくる。緊縮策実施を強行させるために再度総選挙を行う可能性が高い。
今回の選挙結果から緊縮策への抵抗する民意がすでにイタリア社会に見て取れる。それゆえ、たとえ再選挙を行ったとしても、中道左派連合が上下両院の過半数を獲得できるとは限らない。相反して、もし反緊縮策をかかげる中道右派連合の勝利となれば、先行きはもっと不透明となるだろう。
再選挙が思惑通りの結果をもたらすとは限らないが、少なくとも各党派にもう一度チャンスを与えることはできる。どうあれ、イタリア政局の先行きは極めて不透明で、しばし静まりかえってた欧州債務危機が再燃する火種となる可能性がある。
イタリアがユーロ加盟国となった後に経済に理想的になったことはない。
ユーロ加盟国の中で、イタリア経済のパフォーマンスは最下位のギリシャの次に低い。ユーロ加盟国になる前のイタリアはリラを大幅に切り下げることで経済の刺激してきたが、統一通貨のユーロ採用後のイタリアは自身で経済を調整する能力をすでに失ってしまっている。
多くのイタリア国民が、ユーロへの加盟は利より害が多いと見ており、特に欧州債務危機の勃発後は、ユーロ圏の制度に対しより強烈な不満を抱いている。イ
タリアの世論では、ユーロを脱しリラの再発行を主張するものもいるが、ユーロ圏第三位の経済体国であるイタリアの規模は、ギリシャよりもはるかに大きいため、仮にイタリアがユーロ離脱となれば、その影響力は非常に大きいはずである。