今年の焦点は地政学
ここ数年間、世界のマーケットは経済危機にフォーカスがあたり続けているが、2013年の展望として、地域政治問題が市場の新しいフォーカスがあたるように思われる。
欧州にとって2012年は本当に苦しい一年となった。多くの組織が寄り添って努力した結果、欧州債務危機は緩和を見せている感がある。たしかに経済危機の根本的解決に至ってないわけであるが、より大規模な経済危機が2013年に、仮に発生するとしても2012年ほどにはならないであろう。
アメリカの多くの統計データでは、米国不動産市場が底打ちとなり、回復の兆しが見えており、「財政の崖」の2政党協議が合意に達すれば、2013年の米国経済は前年に比べて見込める。
中国に関しては、欧米市場が好転しさえすれば、経済が回復し比較的速度の速い成長となる。一見すると2013年の世界経済は前年と比べて希望が持てるといえるが、しかし、地政学におけるリスクが高まり2013年の経済成長に弊害を与えてしまうかもしれない。 過去数カ月、日中関係は尖閣諸島(中国名・釣魚島)の問題で極めて険悪な雰囲気だ。情勢はやや緩和していると言えるが、それでも両国民の感情は一触即発となっている。
中国では尖閣諸島問題のほか、南シナ海の国境紛争なども火種の一つとなっている。中国では最近、新規発行分のパスポートに対象となる地域をプリントしインドやベトナムでは中国の新規発行旅券を旅券として拒否すると表明してしまった。尖閣諸島問題のほかにも、領土という主権争いにおいてもアジア諸国との関係を損なっていることがわかる。
絶え間ない国家間の論争が問題と浮上するなか、米国は継続的にアジア回帰への姿勢を取り戻しており、米国がミャンマーを積極的に関与しているのは最も顕著な例となっている。政治であれ経済であれ、中国・米国及び多くのアジア諸国間は切っても切れない状況なかで、双方の疑いが助長されている。このように複雑で多様な変化が存在する局面では、渦中のたった一つの地域でも過剰な行動がいったん発生しまうと、その後は壊滅的な結果を招いてしまうだろう。戦争勃発の可能性を論じるわけではないが、経済制裁の実施だけでも十分に世界経済の足かせとなっている。
各国の主権や国境などの論争がどれだけの国々に影響するのかはこれぐらいにしておき、現実的な見地としては米中の力関係のバランスを注視すると、米中は世界の2大経済大国であり、万が一、米中の関係悪化に起因する経済への破壊力は、金融津波や欧州債務危機に比べるほどでもない。