債務削減目標を緩和する方向
ECB(欧州中央銀行)が8月に無制限の国債買い入れを発表してから、市場の欧州債務危機に対する関心は明らかに低くなり、欧州債務危機に関連するニュースが今のところ世界の金融市場に大きな影響をもたらしている様子は見られない。
ECBの発表後、スペイン国債の利回りは6%以下、イタリア国債も5%足らずへ下落。利回りが安定してきたことはスペイン・イタリア両国の金融支援への切迫感を緩和することになった。懸念は和らいだものの、欧州債務危機が今なお解決を見ていない現実的な問題として、フランスの格下げ及びギリシャのきりがない資金援助要求に反映されている。
IMF(国際通貨基金)の譲歩のもと、総額437億ユーロの援助をギリシャはついに獲得した。支援策の中で、2020年までに行う政府債務のGDP比削減目標が、本来の120%から124%に高めに調整された。これはギリシャの債務削減進度に予想よりもやや遅れが出ていることを表している。事実、大幅な経済の減速する状況においては、債務削減は口で言うほど容易のものではない。OECD(経済協力開発機構)の予測によると、ギリシャ経済は来年から2014年にかけてなお継続して緊縮策を講じ、もし経済減速の情況が続くようであれば、IMFとユーロ圏各国が将来的にギリシャの債務削減目標をさらに引き下げる可能性が高く、最終的に債務削減プランは名ばかりの存在となってしまう。
ギリシャもしくはそのほかの欧州PIIGS国家が破産すれば、世界経済に想像を絶する壊滅もたらしてしまため、その深刻な経済危機の爆発を回避するべく、たとえ欧州PIIGS国家が債務削減目標を実現できないことが明らかであるとしても、IMFやEUなどの組織は、資金援助を継続的に提供するほか道が無い。言い換えれば、IMFがギリシャの債務削減目標を緩和させたのはただ上辺を取り繕っただけであることに間違いなく、何が何でも、IMF及びユーロ圏各国は融資を提供するのである。
欧州債務問題を解決していく上で、EUもIMFも「時間稼ぎ」の策略を採用し、ずるずる延ばす手法をとることでさらなる余地の拡大に尽力し、時間をかけて解決しソフトランディングさせるのである。世界経済にとって、欧州債務危機は終始「癌」でありつづけ、この「癌」がいつ消えてなくなるのか、知るものはいない。
それゆえ投資戦略を決定する際、投資家の方々には、欧州債務危機に対する市場の関心が薄れているからといって、水面下に潜むリスクを見落とさないでいただきたい。