米国両党からのクリスマスプレゼントを願う
12月に入り、世界のマーケットが最大の関心ごとといえば、もちろん米国が月末までに「Fiscal Cliff/財政の崖」問題を解決できるかどうかである。
万が一、民主・共和両党の協議がまとまらなければ、年明けに世界経済が一斉に断崖から深い淵へと転落してしまうのは避けられないものとなる。
民主・共和両党は米国経済が崖から転がり落ちる巨大な衝撃を抱え切れるわけもなく、このため常識的に考えて、最終的に両党は協調するはずである。当然、協議の過程では、2党間相互に批判を繰り返し、関連する政治の「雑音」が少なからず株式市場にショックをもたらすであろう。新たなブラック・スワン・イベント(Black Swan Event)が発生しない限りは、政治の「雑音」がもたらすショックは投資家の市場エントリーのチャンスとなるであろう。言い換えると、今月香港株式市場に上場の米国関連株は投機的に売買される可能性があるといえる。
月末前に米国の両党は協議の合意に達する可能性が高いものの、リスク管理の観点に立つと、投資家は米国が崖から転落したときのための心構えを引き続き十分にしておくべきである。
協議決裂のありなしの議論はさておき、協議期限の数ヶ月間の延長を発表する可能性もあり、月末前に吉報が飛び込んでこないだけで、世界の金融市場に大きなショックを与える。ある者は「財政の崖」問題は、以前と比べてすでに大規模なものになってしまったため、月末前に協議が成立することなどありえないと指摘している。債務削減および増税プログラムのスタートも米国経済には、ただちに影響がないと論じている。
筆者はこの論調にさほど同意できない。なぜなら、国民と企業は、政府が社会福祉の削減の実施が目の前であると認識しているときには、先行き見通しに対して短期的な悲観に転じている可能性がある。節約の傾向の国民と、企業も求人を手控え、ひいてはリストラの可能性もあり、その影響がすぐに見て取れるだろうと思っている。
この数カ月の統計では、米国の不動産市場は回復の兆しがあり、「財政の崖」が解決さえすれば、不動産市場の活気が牽引して、来年の米国経済はそれほど悪くないはずである。「財政の崖」の協議の結果如何を待つ間にも、米国株はこの先数週間、ただ変動を繰り返すだろう。直近でオバマ大統領自身は、両党がクリスマス前に枠組み合意に達することを望んでいると述べており、私たちもクリスマスプレゼントを期待したいものだ。