「財政の崖」未解決は後遺症
米大統領選に決着が付き、総選挙後は「財政の崖」(歳出削減と増税の自動的発動)がマーケットの焦点となった。今回の総選挙では大統領が「誰に」のほか、30数名の上院とトータル435人の下院及び若干名の州長が選出された。つまり、現在の議員はじきに退任されるため、見たところ月末までに「財政の崖」回避にむけた協議が、じき解散してしまう国会と政府の間で合意に達する難易度はかなり高い。
ひとたび協議が合意に達せないとなると、ワシントン政府は来年明けすぐに6千億ドルを超える増税及び歳出削減計画を発動させなければならない。米国経済にとって、増税および歳出削減は経済回復の妨げとなる。米国の財務省では以前、今年10月から来年3月までの間に総価値6千億ドルを上回る国債を発行してその所得資金を政府支出に用いると発表しており、米国政府の財政状況がすでに非常に厳しいぎりぎりのラインに達していることがわかる。
もし国会と政府が、短時間内に「財政の崖」解決にむけた協議が不調に終われば、財政危機がすぐさま爆発してしまうのを回避するべく、おそらく国会と政府は「先送り」を用いるはずだ。これは問題解決道筋の期限を遅らせ、これによって自動的に歳出削減の発動を遅らせることにある。いったん「先送り」をしたとしても、混乱した市場への不確定要素の増加となり、米国の格付けを引き下げを誘発してしまう可能性がある。多くの国々とファンドが保有する資産として米国債があることから、仮に米国の格付けが下がるとなると「米国版債務危機」が引き起こし、世界中の米国債の売却によるが利回りが急騰、世界経済に衝撃をもたらす恐れもある。「財政の崖」危機の回避に打つ手がなければ、今日の欧州信用不安が明日の米国で再演される可能性が極めて高くなるといえる。
これから先4年間、米大統領にとって政権の舵取りは決して容易ではない。単に財政問題だけをとってみても十分に頭が痛い。国内問題をうまく処理できなかった場合、米国が外交カードをつかって視線をそらそうとする可能性は十分にあり、中国にプレッシャーをかけ封じ込めるのもその中の一つの手法である。このほか、米国はイランや北朝鮮などとの新た紛争を引き起こす可能性もある。