在庫整理なくして経済の長期安定はない
中国本土の経済衰退のあおりを受け、香港の証券会社は中資株;国企股(中国H株)の利益予測を続けざまに引き下げている。中資銀行H株(工商銀行や招商銀行など)に至っては下落が深刻となっており、中国企業指数の国企指数(HSCEI)も同様に重要なサポート水準を下回ってきた。実際、底打ちしている株式はまたどうしたことか本土銀行株だけでなく、自動車、セメント、鋼材、アルミニウム、水上運輸セクターなどの株においてもマイナスが続き回復が厳しい状況になっている。
欧米経済の不景気は中国本土企業のパフォーマンスにとって当然足かせとなっているのだが、企業がかねてより盲目的に拡張を誘発してきた生産能力の過剰投資も中国本土経済の致命傷となっている。自動車産業を例にあげれば、発展改革委員会は最近まさに企業の意思決定者や政府部門へ注意を喚起している。中国本土の自動車産業は2000年からの急速な拡張の結果、今後長期間において爆発的な市場需要は見込めないことから、過剰生産能力の危機に直面している。言い換えれば、自動車産業界はこの先しばらく急成長を遂げる事は難しいと言える。
中央政府が人民元の量的緩和政策によって経済を刺激するのは当然重要なのだが、もし各業界の生産能力過剰問題をきちんと処理をしないようであれば中国経済は長期安定を望みにくい。各業界に過剰な生産能力を生み出してしまった原因は、大挙して群がる中国本土の文化が根底にあるといえる。国家がある業界の発展支持を宣言する際、該当業界の企業は迅速に生産能力を拡大し、結果として業界に過剰な生産能力がもたらされてしまうのである。再びこのような情況に陥ることを免れるため、政府が一つの業界の発展を支持すると同時に、業界の規模を綿密に計画するべきである。
企業や経済全体にとって、在庫は一種の頭痛の種である。値引きによる販売促進は在庫処理でよく使われるメジャーな方法だ。このほかにも、在庫整理にはとても長い過程を要し、全体プランは常に年単位でたてることになる。アルミニウムと鋼材業を例に挙げると、2大業界の生産能力過剰問題は08年の金融危機以前からすでに表面化していたが、今なお解決にいたっておらず、ここでも生産能力過剰問題の解決が決して容易ではないことが見てとれる。在庫整理の過程で競争力の弱い企業は淘汰されていき、労働市場に悪影響を受けることになる。一方で比較的大規模な企業の視点で見れば、中小企業市場シェアを吸収しマーケットシェアの拡大が見込める。そうすると在庫管理は長期的に大企業にとって有利なのである。