中国の全国人民代表大会が示す成長戦略
中国の全国人民代表大会は先週、北京で開催された。貿易摩擦や景気の逆風を背景に、さらなる政策支援への期待が高まる中、市場の注目が集まった。李強首相は2025年の財政目標と政策の優先順位を示した政府業務報告書を発表し、中国の経済運営の方向性を明確にした。
中国は今年のGDP成長率目標を再び「5%前後」と設定し、インフレ目標を3%から2%に引き下げた。これは、経済の安定を優先しつつ、持続可能な成長を目指す姿勢の表れであり、投資家にとっては安心材料となる。全体的な政策スタンスは成長支援的で市場に友好的であり、「より積極的な」財政政策と「適度に緩和的な」金融政策が繰り返し強調された。新たな大規模刺激策の発表はなかったものの、政策の着実な実行と、不動産セクターや地方政府の債務管理など、実施上の課題の克服に重点が置かれた。これは、短期的な景気刺激策ではなく、長期的な安定成長を狙ったアプローチと言える。
現在の世界経済と貿易政策の不確実性を考慮し、中国は慎重な姿勢を維持しているが、必要に応じて内需を押し上げるための十分な政策余地を確保している点も見逃せない。政府は一般財政赤字の目標をGDP比4.0%に引き上げ、ここ数十年で最も拡大(2024年の3.0%から上昇)させるとともに、超長期特別国債(CGB)を1.3兆人民元発行する計画を発表した(2024年の1兆人民元から増加)。さらに、地方政府には新規特別国債の発行枠を2024年の3.9兆人民元から4.4兆人民元へと拡大することを許可し、地方経済の活性化を後押しする。
投資家にとって特に注目すべきは、政策の方向性として「消費拡大」が最優先課題として位置付けられた点だ。これは、個人消費の活性化が経済成長の原動力となることを示唆しており、内需関連企業や消費関連銘柄には大きな追い風となる可能性がある。さらに、技術革新の推進にも重点が置かれ、特にAIやデジタル技術を通じた産業の高度化が加速する見通しだ。この分野への政府支援が強化されることで、中国のハイテク企業や新興産業は今後さらに成長するチャンスを得るだろう。
また、不動産セクターと株式市場への支援強化も約束されており、投資家にとっては市場環境の安定化が期待できる。これにより、低迷していた不動産市場の回復や、株式市場の上昇余地が広がる可能性がある。
全体として、今回の全国人民代表大会で示された政策方針は、中国政府が成長を支援し、市場の安定を図る強い意志を持っていることを裏付けるものとなった。今後の政策実行次第ではあるものの、中国市場には依然として大きな投資機会が広がっていると言える。市場の動向を注視しつつ、戦略的な投資判断を下す好機が訪れている。