地政学リスクの中で底堅い市場、AI主導の香港株が急騰
米ドルは先進国および新興国通貨に対して軟調推移となった。財政懸念の高まりがユーロ圏の国債に重しとなり、英国のインフレ指標が市場予想を下回ったことでギルト債が圧迫された。米国債は、1月のFOMC議事録を控えてレンジ相場となり、FRBが早急な金融緩和に動かない姿勢を改めて示した。
米国株式市場では、S&P500種株価指数が週半ばに最高値を更新したものの、ナスダック市場は第4四半期の決算発表がまちまちの結果となったことで下落。欧州市場では、ユーロ・ストックス50種指数が上昇一服となり、ドイツのDAXは堅調な推移を維持した。一方、日本市場では、日銀の利上げ観測が後退する中、円高が輸出企業の重荷となり日経平均は下落した。新興国市場はまちまちの動きとなり、韓国のKOSPIは堅調、上海総合指数は小幅高となった。コモディティ市場では、原油と金が上昇する一方、銅は下落した。
米国市場:リスクオフの流れが一時強まるも、強気な成長見通しを維持>
先週金曜日、リスクオフの流れが強まり、S&P500種指数は1.7%安と今年最大の下げ幅を記録。米国債利回りも低下した。市場では、インフレ圧力や関税政策の不透明感、消費者需要の鈍化が懸念されている。米国の消費者心理指数とサービス業PMIが市場予想を下回り、小売大手の企業ガイダンスも個人消費の先行き不透明感を示唆した。
しかし、2025年のS&P500種指数のコンセンサス収益成長率は前年比12.7%(2024年は10.2%)と見込まれており、成長戦略とAI主導のイノベーションによる収益拡大が追い風となる見通しだ。トランプ前大統領の減税支持も市場の期待を押し上げる要因となるだろう。マクロ面では、1月のFOMC議事録が示すように、米国の成長見通しと労働市場は引き続き堅調であり、市場の混乱が一時的である可能性が高い。
日本市場:インフレ加速と日銀の金融政策の行方
日本では、リフレ基調の継続により、日銀の追加利上げの可能性が引き続き意識されている。1月のヘッドラインインフレ率は、食品価格の上昇を背景に前年同月比4.0%(前月3.6%)と大幅に加速し、生鮮食品を除くコアインフレ率も市場予想を上回る3.2%の伸びとなった。しかし、上田日銀総裁が債券市場への介入の可能性を示唆したことで、日本国債(JGB)利回りは低下し、円安が進行した。
市場は現在、7月に日銀が25bpの利上げを実施する可能性が高まっていると織り込んでおり、これは当社の見通しとも一致する。日銀は2025年第3四半期(おそらく7月)に政策金利を再度引き上げ、2026年第1四半期には1.0%まで利上げを進めるとの予測に変更はない。
香港市場:AI主導の上昇で世界同時株高を牽引
グローバル投資家の資金流入を背景に、香港市場が世界の株高をリードした。ハンセン指数(HSI)は4%急騰し、2022年初頭以来の高値を更新。週間ベースでも3.8%の上昇を記録した。
特にアリババの好決算とAI関連銘柄への楽観的な見方が追い風となり、香港上場の中国ハイテク株が上昇。ハンセン・ハイテク指数(HSTECH)は6.53%急騰し、2020年以来の週間連騰記録を達成した。
個別銘柄では、アリババ(9988.HK)が第3四半期決算で売上高8%増、純利益333%増、営業利益83%増と市場予想を大きく上回る結果を発表し、14.56%の急伸。さらに、同社は今後3年間でクラウドとAIインフラへの投資を加速させる計画を発表した。通信セクターも好調で、チャイナユニコム(0762.HK)が31%の大幅高を記録した。