FRB利上げは辛抱強く待つ
米国の雇用市場を見ると、失業率が低下し非農業部門の雇用者数が20万人を超えて増加を続けているものの、賃金の上昇が大きく加速していないことから、米国の雇用市場の現状は量的ではあっても質的ではないと言える また、ここ数ヶ月、国際的な原油価格の下落が続き、デフレの恐れが高まったため、世界の多くの国がこれに対応するために緩和的な金融政策をとらざるを得なくなった、 賃金上昇やインフレに対する圧力がないため、米国は間違いなく利上げを控える立場にある。そのため、今回のFRBの会合後の声明では、「利上げを辛抱強く待つ」という言葉は使われなくなったが、会合後の声明の内容やイエレン議長のメモのコメントをすべて考慮すると、FRBが利上げを急いでいないことがわかる。事実、理事会後の声明では、雇用市場がさらに改善し、インフレ率が2%に上昇するとの合理的な確信が得られるまでは、利上げを行わないとしている。また、注目すべきはFRBがフェデラル・ファンド・レートの見通しを、今年と再来年は0.5%、来年は0.5%以上引き下げたことで、米国が利上げを行うとしても、その速度と頻度は従来の予測よりも低くなることが示唆されている。
シカゴ連邦準備銀行の総裁はFRBの直面する最大のリスクは時期尚早の利上げであり、経済が反転する可能性を高めていると述べた。また、同総裁の発言は、米国経済が皆が考えているほど堅調ではない可能性を示唆しているように思われ、連邦資金金利見通しの引き下げは、米国経済の減速リスクに対するFRBの懸念を反映したものた。実際、欧州と日本、中国の経済が低迷している中で、米国経済が減速しているのは当然のことだ。
ダウ平均やS&P500が先に史上最高値を更新した一方で、経済活動を反映するダウ・ジョーンズ輸送指数は追随しておらず、米国経済の弱体化が示唆されているほか、米国の10年債、30年債の金利はまだ下降局面を脱しておらず、米国経済が長期的に改善すれば、長期金利は下降ではなく上昇に転じるはずなのだ。