人民元の市場化で産業転換へ
2010年8月以来、月曜日だけで最大の下げ幅を見せた人民元だが、人民元の切り上げ圧力が収束を迎えたかどうかがマーケットの関心を引き付けている。
現実的にどの国の貨幣にしても自国の経済状況に左右されるもので、輸出の落ち込みを見せるなか、上昇の歩調を緩め且つ僅かな切り下げは正常な状態であると言えるだろう。人民元改革の後、年々続いてきた上昇トレンドは、上がるだけで下がることはないといった感覚を与えてしまい、少々の下落は主な投資家にとって人民元にも他の通貨と同様に下落リスクが内在していることを思い知らせてくれた。
中国人民銀行の周小川総裁は、中国が現在行っている産業構造の改革や貿易黒字の縮小によって人民元は均衡的なレベルにすでに接近し、今後、変動幅を拡大しなければいけないと明らかにした。その言及内容のなかにポイントが2点。
1.人民元はすでに適度価格となり、将来切り上げるとしても余裕に限りがある。
2.変動幅を設けることによって下落の余裕を持たせることができる。
事実、中国本土では2月300億ドル以上の貿易赤字を記録し輸出改善に向かうには人民元の上昇トレンドは中国にとって決してメリットにならない。
近年、中国は積極的にサービス産業への比率を引き上げる産業構造の変革に取り組んできた。そのキーポイントとなる産業構造を製造業からサービス産業へシフトできれば、人民元レートをマーケットに完全に委ねることを許容できるのだ。
中央政府による為替介入を減少させマーケットに人民元レートを決定させ、その結果、国内の資本を適正に導き、集中してる製造業から流動させることができるのだ。
中国本土にとって、欧債危機はグローバル資本の流出となり、人民元の変動幅を拡大する理想的な時期となる。人民元の変動幅拡大は中国本土の徐々に為替政策の成熟してことを意味し完全変動相場制の移行への日が一段と近づいた感がある。当然、人民元の切り上げに投資している者にしてみると、変動幅拡大は不安定さを加速させ投資リスクを増加させることになり、よいニュースではないだろう。