FRB議長年内の利上げの可能性を示唆
欧州経済の低迷と中国経済の低迷、日本経済の改善が見られないなどの影響から米国経済の成長が鈍化しても不思議ではなく、さらに、米国経済は常に消費に牽引されており、賃金の上昇や低インフレは消費者心理を悪化させる。また、ドル高は米国の輸出には不利であり、個々の企業の収益性にも悪影響を及ぼすなど、米国経済を圧迫する要因となっている。
そんな中、FRBのイエレン議長は議会の公聴会に出席し、スピーチの要点を4つにまとめた。第1に、雇用市場は引き続き改善しているが、賃金上昇率とインフレ率は依然としてFRBの目標値を下回っていること、第2に、FRBは今後、各会合で利上げの必要性を検討し、これにより、金利政策に十分な柔軟性を持たせることができること、第3に、FRBは利上げを実施する前に、金利ガイダンスを前方に改訂すること、つまり、ガイダンスを改訂する前に、FRBは利上げを行わないこと。 第4に、今後2回の会議では利上げが発表されないこと。
以上を総合的に勘案すると、米国が年内に利上げを行う可能性は低くなり、また第4四半期まで利上げを延期する可能性も低いと推察されます。
実際、世界の多くの国で量的緩和が行われているが、米国が他国に対して金利を上げることに固執すれば、ホットマネーが米国に流入し、その時には米国がリスクに直面しなければならなくなるだろう。今は原油価格の急落により世界のインフレ率は低水準にとどまり、各国ともデフレの危機にさらされてる。中期的にはインフレ率の上昇が見込まれるが、短期的には米国に利上げの緊急性はないと言えよう。
イエレン議長の講演では、賃金の上昇と低いインフレ率に言及しているが、この発言が米国経済の好調さを示唆しているかどうかは、よく検討する必要がある。 このところDowやS&P500は過去最高値を更新しているが、経済活動を反映するダウジョーンズ運輸指数は同時に最高値を更新していない。
運輸指数の出遅れは米国経済の減速リスクを示唆しており、ダウやS&P500に比べて運輸指数が弱い状態が続くかどうかに注目したいところだ。