追加緩和余地を残す米国FRB
ユーロ圏などで導入された緩和策を受けて、FRBが会合後の声明で利上げの延期を示唆するのではないかと予想されていたが、実際にはFRBは利上げの延期を示唆せず、今年中に利上げとなる可能性が依然高いことが反映されている。
前回のポストミーティングの声明でも、FRBは利上げに対し「忍耐強く待つ」と表現しており、前回の会合後声明と同様の陳述となっている。一般的には、FRBが「Patiently waiting(忍耐強く待つ)」という言葉を削除すると、次回の会合で利上げを実施すると考えられている。 また、今回の政策決定書の投票結果は10票差で全会一致で可決され、メンバー間の意見が一致し、今後の利上げの実施に向けて相違点がなくなったことを反映されている。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、金融市場や雇用市場の情報を見るだけでなく、国際的な動向にも注目するとしている。 推論すれば、FRBの金利政策はやはり国際情勢に左右される可能性がある。 実際、ここ数カ月で世界経済の状況はかなり複雑になっており、原油価格の下落は止まらず、中国経済も下振れリスクを免れず、ECBが量的緩和を実施し、多数の国々が相次いで利下げを行うなど、これらすべてが世界経済を激変させるのに十分な材料となっている。
経済的パフォーマンスについては、米国経済の見通しに対するFRBの楽観的な見方を反映して、FRBは「堅実な成長(Solid Growth)」と表現している。
原油価格の下落で米国のインフレ率が下がるので、米国は単に利上げを急ぐ必要はないという見方もあるがFRBは、原油価格の急落によるインフレ率の低下は短期的な現象に過ぎず、中期的な米国のインフレ率は2%近くまで回復すると指摘しており、FRBは米国がデフレに陥ることを心配していないことがわかる。 FRBは米国経済の先行きを好感しており、利上げに対する懸念は基本的に無くなっている。しかしながら、今なおFRBは利上げ実施に僅かな「執行猶予」を残している。
国際情勢が芳しくなく、米国経済は単独では存続できない可能性があるため、FRBがあるある程度の猶予を残しておくことは理解できる。