言説に垣間見るQE3公算
先日行われた議会において、FRB(米連邦準備理事会)は一部の投資家たちが期待を寄せるQE3(量的緩和第3弾)を実施することはなかった。
議会後の声明でも、FRBがすぐQE3を実施するかどうかは明示されずじまいだ。事実、FRBが動かずに時機を待つという選択をすることは少しも不思議なことではない。
その原因は今のところ米国経済が必ずしもFRBから強い薬を投与されなければならないような状況にないことにある。確かに認めざるを得ないところではあるが、米国経済の成長動力はややスローダウンしていが、すでに衰退の道を歩んだ欧州や下降線上にある中国経済と比べて、米国経済はそこまで悪いとは言えない。この状況下で、FRBははたして焦って強い薬を投与するだろうか。米国をはじめ、ひいては全世界にとってもQE3は非常に重要な措置の一つであり、バーナンキ議長が土壇場に達していないのにQE3を実施について軽々し発言することはないと、筆者は信じている。
米国経済が欧州や中国と比べて好調であることから、資金は米国に流れ込むだろう。資金が米国に流入するにつれて米国市場の流動性は向上し、米ドル資産の価値上昇にとってプラスの後押しとなるだろう。QE措置の主な目的はまさに市場の流動性を向上することであり、資金の流れが米国に向かい流動性の向上に役立っている現状、FRBは根本的に焦ってQE3を実施する必要が無いのである。欧州と中国が絶えず貨幣供給の増加を行いさえすれば、資金は連続して途切れることなく米国に流れ込むだろう。米国にとって、欧中の金融緩和はFRBがQE3を実施していると同等であると言えるのである。
今回の議会を終えてFEBは未だQE3実施を宣言してはいないものの、議会後の声明の中には、米国経済を形容するいくつかの悲観的な語句があった。例えば上半期の経済情勢を「減速(decelerating)」と形容しており、ここからFRBが将来的にQE3を実施する可能性が以前よりも上昇していることが垣間見える。FRBは8月末のジャクソンホール会合の後、次の会議を9月11日および12日に開く予定だ。この両期間にFRBがQE3に踏み切るか否かに注目だ。
QE3が実施されず、市場は多かれ少なかれみな失望している。しかし、株式市場投資市場のもっとも急を要する期待があり、FRBがはっきりとQE3実施しないと表明しなければ、市場はQE3に対していつまでも期待を持ってしまう。言い換えれば、QE3実施への期待が株式市場を押し上げる好材料の一つとして機能することになる。