急激なインフレ終息はデフレ懸念の声も
中国人民銀行は1ヶ月以内で2度に渡り政策金利引き下げを行った。
これは経済成長の原動力への影響が予想より弱かったということだけでなく、インフレ圧力がさらに鈍化したことも表している。 江蘇訪問の際、温首相は中国本土の経済は依然として下方圧力があるとし、本土の経済は現状、理想的ではないと見解を示した上で、温首相は不動産価格の反発に厳重に警戒するとも述べた。 事実、ここ2、3ヶ月で本土の不動産市場は安定を取り戻しつつあり、取引量や不動産価格が一定の上げ幅を記録したとしても、人民銀行が一歩一歩、金融緩和をすることが、不動産市場の安定回復をサポートする主な要因となる。
中国本土の経済にとって、不動産市場は両刃の剣である。市場が上向きなら経済成長を促し、下向きとなれば経済が前へ突き進むパワーをそいでしまう。 経済の悪化に直面しても、本土が不動産市場の適度な回復を許容できると、市場の信頼があれば、これによって経済悪化の圧力はやわらげるものとなる。 しかし、もし不動産市場の回復幅が見通しを超え、ひいては高騰までしてしまった場合には、本土はすぐさま再び市場の勢いを弱める為の一手を出すであろう。 このことから、本土不動産市場の今後は更に良い方向へ進む条件があるものの、不動産市場の上昇は再び規制強化リスクを増加させてしまう。
インフレの面で見ると、6月のインフレ率は前年同月と比べて2.2%増と、5月の3%と比較して著しく鈍化しており、内部需要不足を示している。 インフレ圧力が迅速に軽減する情況下、人民銀行が将来的にさらに大きな「放水」をする余地も一方ある。インフレ率が連月急速に反落するにつれ、いつのまにかデフレへの懸念がじわじわと形成されてきた。ある分析では、インフレ率が今後2%足らずまで下がると指摘している。仮にインフレ率が2%を割るならば、金融市場は中国経済がデフレに突入しあらたな振動が現れるのではと懸念する。 欧州や米国の中央銀行の指標によると、まずまず理想的なインフレ水準は2%~3%ということで、本土がインフレ率を2%~3%の間に抑制できるかどうか様子を見よう。
インフレと比べて、デフレは更に恐ろしい。アジアの金融危機後、香港は長いデフレ周期を経験し、日本経済はさらに長期のデフレ問題に苦しめられている。 デフレ周期のもとでは、消費や投資意欲は皆低迷し、絶えず「放水」しようとも問題解決に結び付くとは限らない。