オイル価格の低迷はロシアにとって損失
ここにきて原油価格の下落が顕著となってきており、世界的な需要低下によるさらなる価格下落が懸念されている。米国を除いて、欧州、日本、中国等のエリアでは経済状況がいずれも思わしくなく、世界経済が下方圧力を受けるなかでは、原油価格の下落も必然と言えよう。需要要因は原油価格の相場を左右する主要因となりうるが、原油価格下落の背景には更に複雑な国際政治的要因が関係している可能性がある。今年に入ってから、世界の至るところで情勢が緊迫していおり、これまでの経験上、地政学的リスクが高まるときには原油価格は上昇してきたのである。しかし、今年の原油価格の相場を見ていると、地政学的リスクは今のところ原油価格の上昇に影響を与えておらず、なぜに地政学的リスクは原油価格を押し上げていないのだろうか?
ロシアと米国の原油価格への思惑
ウクライナ情勢が不安定となってから、双方が制裁を加え合い米露関係は緊迫している。これまでずっと米露はお互いを「目の敵」にしてきたため、ウクライナ問題は、米国がロシアへダメージを与える格好の機会となっているものの、直接的で露骨な制裁を行えば必然的にロシアからの反撃を受ける事になってしまう。この点を踏まえると、米国が目立たぬ手段でロシアにダメージを与える可能性も大いにある。ロシアの天然資源の莫大な埋蔵量からして国家収益は石油と天然ガスの輸出への依存度が極めて高い。ロシア経済に打撃を与えるべく、国際的な原油価格の低下を促し、成長エンジン失わせ財政赤字懸念を与えるのも一つの方法だろう。
次世代エネルギーであるシェールガス革命に期待
科学技術の発展とともに米国では、強力にシェールガス産業に投資しており次世代のエネルギー純輸出国になることを視野に入れている。世界のエネルギー市場における米国の影響力が高まるにつれ、米国は原油価格の低下によりロシア経済に損失を与える事はさほど難しくないく、逆に米国経済にとっては、メリットにもなるのだ。米国に加え、欧州、日本、中国等も同様に原油価格下落による恩恵を受けられ、原油価格が急落しているにもかかわらず、サウジアラビア等の米国よりの産油国は、価格下落を食い止めるための産油量削減にはまだ踏み切っておらず、この動きは実質的に米国に協力してロシアを攻撃していると言えよう。