香港デモとストックコネクト
香港民主化デモによる「オキュパイ・セントラル」(中環を占拠せよ)の影響によって「滬港通」(上海・香港ストックコネクト/株式市場の相互乗り入れ)の開始が延期される可能性が絶えず報道されている。中国にとって、「滬港通」は非常に重要な改革の一つであり、人民元が対外的に全面開放される国際化の過程であることから、筆者は中国政府がオキュパイ・セントラルを理由に「滬港通」の開始時期を延期させる可能性はほとんど無いと見ている。もし10月中に「滬港通」を開始できない可能性があるとすれば、中国本土と香港の両エリアで税務等の細部の調整が間に合わない等が要因となろう。いすれにせよ、「滬港通」の重要性に基づけば、遅かれ早かれ確実にスタートを切ることになる。
人民元の国際化と滬港通の関係
人民元通貨改革に加え、「滬港通」は中国本土の株式市場が国際進出を果たせるか否かにも関係してくる。未だにA株が世界的な株価指数の構成銘柄に組み入れられていないのは、中国以外の投資家によるA株の売買ができない点が主な障害となっている。「滬港通」にも限度額や銘柄制限あるものの、以前の外資による売買禁止と比べれば確実に相場の上昇突破をもたらしている。MSCIは来年5・6月頃にA株をMSCIエマージング株価指数(MSCI Emerging Markets Index)に組み入れるか否かの結果を発表をする見通しで、「滬港通」が順調に運営できれば、A株が国際舞台に踊り出るのことになる。
中国本土と海外の自由な株式による資本移動
中国の各取引所が「滬港通」のモデルをベースにして、その他の株式市場との相互乗り入れを実現するようになれば、香港の優位性が損なわれるのではとの一部の懸念の声もあるが、これは過度な反応であると言えよう。
まず第一に、「滬港通」の効果を評価できない段階でであり、実装の過程において、想定外の障害が発生するか否かは様子を見る必要が有る。このように、十分に把握できない間に中国政府が急いで新たな相互乗り入れを進めるとは思えない。また、中国本土の株式市場と海外市場との直接の相互乗り入れは非常に複雑なプロジェクトとなるはずで、相互乗り入れの実現には、法規制、監督体制、文化や取引習慣などの相違を真っ先に解決しなければならず、その過程を終えるには数年を費やす事になる。上海と香港は、よく似た近代都市であるため、課題解決の際には比較的共通功を見つけやすく、ここから海外市場との相互乗り入れを実現するのに難しくさせている。