僅かな利上げでも市場を揺るがす
2008年の金融危機からすでに6年。この6年間で、全世界が歴史的な超低金利の状態が続いている。米FRBは間もなくテーパリング を終了し、遅かれ早かれ金利は正常な水準に戻ると一般的に予想されている。利上げの実施の時期は不明瞭であるが、最近の情勢から見ると、徐々に全世界の金融市場が米利上げ時期に焦点を当てつつある。多くの人々が、たとえ米利上げとなっても、たいした上げ幅にいたらず、ペースも速くなく、市場にさほど大きなダメージを与えないだろうと見ている。しかし上述の見解について、筆者は決して賛同できない。
米国債は短期債で上昇、長期債で低下
年明けから現在まで、米国債利回りは満期の長短で「短期債で上昇、長期債で低下」の動きとなっており、市場が利上げを単なる短期的現象であると見定め、米国の長期的展望においては慎重な態度、つまり低金利が継続すると判断していることが反映されている。ここから、金融政策として米利上げ幅は当然制限を受けよう。とはいえ、米金利は極めて低水準であるため、基数的効用から、小幅の利上げでも市場にショックを与える可能性は十分にあるだろう。現在、フェデラル・ファンドのレート(Federal funds rate))は0%~0.25%の間で推移しており、もし金利を25ベーシスポイント引き上げる場合でも、フェデラル・ファンドのレートを0.25%から計算すると、倍の利上げ幅に達する。つまり、企業の利払いの支出や借入コストが短期間で倍増する可能性があるのだ。借金で首が回らない自転車操業の企業にとって、25ベーシスポイントの利上げでも十分に財務上の負担が拡大する一方、大量のキャッシュを保有する企業は、利息収益が著しく増加する見込みが出てくる。
雇用情勢のほか、不動産市場の動静
労働市場が注目されるほか、不動産市場の動静も米FEBによる利上げの判断材料の一部となる。米不動産市場は2012年にようやく底を脱し、近年では米経済の着実な回復を牽引してきた。近月、米不動産市場は減速が表面化しており、第2四半期の住宅価格指数は0.8%増で、第1四半期の1.3%を下回ることになった。不動産価格の上昇ペース鈍化、供給過多および市場の金利動向の見通しには関連性がある。米不動産市場の弱化が、米国経済の新たなリスクとなる可能性をイエレン米FRB議長は表明しており、同氏が米不動産市場の動静に非常に関心を寄せている事がわかる。