人民銀利下げの影響
中国本土発表8月PMI指数が0.6%下落した51.1%を記録し低調になった。 その他景気指標も軒並み8月が6,7月に満たない結果となっている。
中国経済になおも下方圧力が見られ、中国政府が今後より多くの景気刺激策を打ち出す可能性が極めて高い状況となっている。ある分析によると、今回の利下げで緩和できる資金は200億元にとどまり、以前に数回実施された預金準備金率の引き下げによる1,000億元以上の緩和には遠く及ばないため、今回の利下げ効果は前回の預金準備金率の引き下げほどでは無いとしている。しかし筆者は、政策金利の引き下げと預金準備金率の引き下げは2つの異なる措置であり、影響する箇所が完全に異なるため、この2つの措置の効果について、単純に金額の規模を比較するだけでは十分に評価できないとする。
預金準備金利の引き下げ
預金準備金率引き下げの目的は、銀行セクター全体の資金を増加させ、銀行により多くの資金を貸し出すよう促す事にある。しかし、銀行の資金増加は必ずしも貸付け市場の活性化を表してはいない。なぜなら、貸付け需要の多寡は経済先行きに左右されるため、経済先行きに懸念がある場合にはたとえ銀行の資金が氾濫したところで、貸付け市場が活性化されることはないのだ。一方で政策金利の引き下げにおいては、借り入れコストを引き下げ、債務負担を軽減させる事が目的となる。理論上、企業であれ個人であれ債務を抱えていれば、利息の引き下げは財政負担の軽減に役立つ。預金準備金率引き下げと比較して、政策金利の引き下げはより広範囲に影響を与えるだろう。どうあれ、中国が利下げによる経済刺激を行う以上、中国経済の現状及び先行きがいずれも予想より悪い事を示しているため、政府は政策実施による経済の下支えが必須だ。
預金準備金率及び政策金利の引き下げ決定後は、中国人民銀行(中央銀行)がこれを全面的に受けて実施に踏み切るか否かが市場の次の焦点となる。しかし筆者は、中国本土経済が極めて悪い状況に陥らない限り、信用バブル初期の頃を思い起こせば、中央銀行が利下げに踏み切る可能性はまだ低いだろうと見ている。金融政策のほかに、中国政府はインフラ建設や環境保護等の政策によって経済刺激を行っていくと予想する。