ゴールドラッシュ以降の小売業界と金融業
日本の1,036万人の訪日旅行者数に対して、およそ5倍の約5,400万人の旅行客が香港に2013年は訪問しています。ほとんどの観光客がショッピングや金融商品の購入を目的としており、香港はロンドンやミラノより高級ブランド店がたくさん店舗を構えている。ロレックスなどに至っては繁華街であるといちブロックに一店舗が必ずといって存在する。
香港ではタバコなどを除きほとんどの物には税金もかからないため、また消費税が存在しないため香港全体が「デューティーフリー」で、何となくすべてが安い感じもする。
その5,400万人のなか4,500万人が中国本土からの旅行客といったデータとなり、香港はその数え切れない旅行者のおかげもあって消費都市であるが、今年は主に中国本土からの旅行者の消費が伸び悩んでいる。
香港政府統計処が8月28日発表した7月の小売売上高(速報値)は前年同月比3.1%減となり、ここ6カ月連続のマイナス成長という結果。
昨年5月に金価格の底値であると判断してしまった中国本土からの旅行者が金を香港で大量に購入して帰るといった「中国大媽搶金潮(中国おばさんゴールドラッシュ)」がマスコミ各社で話題騒然となり、それ以降小売り業界は低迷を余儀なくされている。
消費以外の金融市場としての香港の今
香港の資本市場は歴史的に大英帝国の港として発展してきた経緯から金融業と金融関連サービス業が非常に発達してきました。そのソフトの力を利用して現在でもアジアの金融ハブとして機能している。
2013年、香港に流入した資本は770億米ドルで、世界第4位の規模を誇り香港を経由していく資本は920億米ドルとなり、世界第5位の規模。年間1兆700億米ドルの金融資本が香港で取引されているわけですが、このうち約40%は、租税回避を目的で流入してきているとされ、ともあれかなりのおカネが香港で取引されているのは明らかな事実であると言えます。
なお、香港は中国資本の対外むけ窓口であり、海外資本の対中国の窓口といった側面もあります。これは中国人民元が自由に取引されているところがまだ香港に限られていることと、本土に地理的にアクセスしやすいのが大きな理由となります。
中国に投資したい企業の資本が香港を経由し中国本土に入り、また、逆に中国の資本も香港を経由して海外に出ていくことにまります。香港の投資誘致業務を担当する機関として、InvestHK香港投資推進局が存在し世界28都市に支店を設けている。
香港が国際金融都市として成長できた理由には、完全自由化された市場システムを備えていることがあげられる。
香港のパスポートホルダーは150カ国をビザなしで訪問することができ、香港国内では英語と中国語が香港の公式言語である点も強みとなるし、また、国際的な教育機関や病院もあり、配当・利子税や固定資産税、贈与税、相続税が存在しない。さらに、労働市場は雇用と解雇が完全に自由となり、文字通り資本家にとっては天国に近いかもしれない。
企業の経営者にしてもスタートアップしやすい場所と言えます。2014年度上半期だけで32カ国、200社が香港で支店を新たに設けている。
中国政府が香港での成功体験をさらに他の地域で応用すべく、第2の自由貿易試験区を上海浦東新区に設けた。上海は香港にとって有力な競争相手となりますが、香港投資推進局によると、コンセプトや制度が同じなっても、香港は情報に対してより自由で、香港ドルは米国ドルとほぼ固定レートとなり、一方人民元は現在、自由に海外に持ち出せませんが香港では、街中で自由に取引されている。
こういった要素から、米国のシンクタンクであるヘリテージ財団とウォールストリート・ジャーナルが発表した2014年経済自由度指数(Index of Economic Freedom)によると、香港が20年連続で世界第一位を保持し続けている。