スペインの急速なギリシャ化
G20首脳会議を終え、各国は国際通貨基金(IMF)に4,500億ドルの資金を注入することで合意した。
会議では、新興国と西側諸国は各国互いにメリットが得られたと言える。 新興国が資金注入を求めた後はより大きい発言権を獲得することができ、かつ西側諸国はもちろん資金援助を得ての困難解決を望む。しかし、4,500億ドルの資金注入では、絶えず悪化する欧州信用不安に対処するにはまだ足りないようである。
スペインやイタリアからの国債利回りが絶えずじわじわと上昇してきたことから、市場は両国が危機を脱する可能性に対して懐疑的である。ここ数日、スペイン・イタリアの両国は国債入札が好調なものの、国債利回りは何度も高値を記録している。 両国の際限ない高利回りの負担が不可能である状況下、「借金で借金を返す」といった日々は終止符を打たなければならないだろう。 言い換えれば、各国は必ず欧州債務問題を解決する新しい方法を考え出さなければならない。
GDPに占める国債の比率をみると、ギリシャは160%に達しており、スペインと比べてずばぬけて多い。 理論上、経済支援を受けて経済回復ができれば、スペインの債務問題はスムーズに解決できるはずである。しかし、EUに1千億ユーロを借り入れたことで、スペイン公共債務のGDPを占める割合が90%まで上昇した。この比率の急上昇はスペイン問題をギリシャ化させてしまうであろう。ある機関の予測では、1千億ユーロの金融支援では基本的にスペインの資金不足を解消するには不十分であり、将来的に再度国外に援助を求める可能性が極めて高いとしている。加えて、スペインの就業人口は4分の1が失業、経済回復ははるか先であると言える。公的債務の急増に加えて回復の望みが無いという相乗作用のもと、スペインの先々の情況は引き続き悪化する可能性が非常に高い。
リーマンショックの後、絶えずマネーサプライを増やすことが各国の金融危機対処の重要な措置となったが、いつまでも資金注入することなど不可能である。米国を例にとってみると、FRB連邦準備銀行は相前後して量的緩和政策を二回行ったが、QE2の金額はQE1に比べると少なくなった。債券買入れを通して市場に資金注入を絶えず行えば、最終的には債券市場の崩壊を招きかねないことをFRBも恐らく理解しているのであろう。
新たな危機の創出を免れるために、たとえQE3を行うにしても、金額は当然QE2より少なくなるべきである。 QE2の効力はQE1より見劣りしたため、もしQE3の規模がQE2に及ばないのならば、QE3の効力は想像にたやすい。