米国債利回り低下は嵐の前触れ
米国債利回りの低下が続いており、10年債利回りは2.5%を割り込んでいる。米FRB(連邦準備理事会)が債券購入規模を縮小であるテーパリングを実行するなかで、米国債利回りが低下した要因として、三つの可能性が考えられる。まず第一に、米国株のピークが懸念されたことにより、資金がリスク回避として債券市場に流れた可能性。第二に、米国経済先行きの失速懸念から、利上げ予定が遅れるとの予測によるもの。そして第三に、諸外国から米国への資金流入によるものだ。
調整を少し前に終えて、ダウ指数及びスタンダード&プアーズ500指数は最近再び史上最高値を更新しており、米国株は好調を維持しているものの、米国株の高値維持は難しいと懸念している投資家の声もある。多くの投資家が米国株の上昇幅にも限りがあると見ており、加えて、アリババ上場後にやや深い調整基調に入るのではという声も有る。このため、資金が株式市場から債券市場へ流れ、まずはリスクを回避しようとする動きとなるのも当然であろう。 経済面において、米国では第1四半期の経済成長が予想を下回っており、ある分析では、その主な要因を年明けの寒波の影響によるものだとしている。第1四半期の経済指標のほか、近月の一部のデータでも予想をやや下回っており、米国経済の失速を懸念する声が上がっている。毎月第一金曜日にいつものように最新の雇用データを公表しているが、もし非農業雇用者数が増加を続け20万件を上回ることができれば、米国経済は好調な成長ペースを維持できよう。しかし、そうでなければ米国経済は失速に転ずる可能性がある。 少し前に、米ドル相場は79ポイントの重要なサポート・ラインを割り込み、その後反発。米ドルの反発によって、資金の動きが再び米ドルや、米ドル資産の買い入れに向かっている。かねてから米国債はリスクがほぼゼロとなる投資手段だと見なされているため、もし海外資金が本格的に米国へ流れ込み、米国債の購入が進めば、米国以外の国の株式市場でこの先かなり深い調整期が訪れることもありそうだ。 米国債利回りの下落と上述の可能性との関連性の有無はさておき、最近の米国債利回りの異常事態は、嵐の予兆を感じさせる。世界の株式市場でまだはっきりとした調整圧力は見られないものの、米国債利回りの低下が続いている事を踏まえれば、株式市場への投資家は引き続き警戒が必要だ。