利上げ時期の示唆
FOMCを終え、イエレン米FRB議長は、今秋の債券購入プログラムの終了と6カ月後の政策金利引き上げを表明した。市場ではすでに今秋の債券購入プログラム終了に見通しがついていたため、より焦点となっていたのは米国の金利引き上げ時期であった。イエレン議長が初めて政策金利の方向性を言及したことで懸念の和らげたと見られる。イエレン氏が示した期間から推測すると、米国の政策金利は早くて来年の第2四半期に引き上げられる見通しとなった。「市場の相場予想のコントロール」はFRBの常套手段であり、現時点で金利引き上げ時期を表明することにより、市場心理に予め準備を促している。
金利引き上げ時期への注意を促す一方、イエレン氏は失業率基準を撤廃し、金利引き上げの決定基準は雇用統計にかかってくると見られる。すなわち、たとえ失業率が6.5%を下回ったとしても、その他の指標が雇用市場の弱含みをである限り、当局が金利引き上げに踏み切る可能性は低い。
イエレン氏は米議会の公聴会において長期失業率が依然高い水準にあり、不完全雇用率が深刻な状況であると言及していることから、すでに雇用統計のなかで別のデータに着目していることが見て取れる。失業率基準を撤廃することで、FRBは政策実施の柔軟性をもとたせ、仮に雇用市場が理想的な状況になった場合、当局は予定通り引き締め政策に踏み切るが、そうでなければ量的緩和策を維持することになるであろう。同時にイエレン氏は、金融当局が債券購入プログラム終了時点の6カ月後に金利を引き上げる可能性を示唆している事から、米労働市場を楽観視していると見られる。
米国にとってみれば、来年第2四半期の利上げは好材料となり、利上げが可能となることで米国経済の理想的な成長であると評価できる。一方で、新興国市場は、更なる資金流出の脅威に直面することになろう。昨年から、資金は続々と新興国市場から米国へと流れており、米国の利上げの可能性が高まるにつれ、資金流出の速度はより一層加速すると見られる。イエレン氏による利上げ時期の事前示唆によって、新興国市場にダメージ抑える対策を促す機会が見込めるであろう。