人民元安が資金流出を招く
3月19日、人民元の対ドル相場が1ドル=6.20元の大事な水準を割り込み、ここ一年での最低水準へ下落しました。高水準であった今年1月の6.03元から累計2.8%下落しており、2カ月間での下落幅も最大を記録している。この動向から、長期に渡って続いて来た為替改革以降の上昇トレンドがすでに崩れ、人民元が上昇するばかりであった局面は崩れてしまいました。そして、これこそが中国人民銀行(中央銀行)が主導した人民元安という目的の一つだ。
2月から中国人民銀行は為替相場の下落に積極的に関与を始め、人民元を一方的に上昇させる投機筋に打撃を与える一方で、国外からの資金流入を抑える形で、人民元の市場化と国際化のための環境整備を図っている。そして予想通り、3月15日中央銀行は人民元の対ドル為替相場の1日あたりの許容変動幅を現在の1%から2%へ拡大。これは、制限を緩和させることで、いくぶんかの市場主導による為替相場変動を試みるのが目的です。このためこの先の人民元相場にはやや大きな変動が発生するだろう。また、先日人民元とニュージーランド(NZ)ドルの直接為替取引が実現となり、人民元と直接為替取引ができる貨幣が4種類となった。この一連の動きから、明らかに為替相場改革が順調に進行していることが分かる。
仮に、2月の人民元安が中国人民銀行の主導によるものだとすれば、3月も続落となった要因は市場の悲観的情緒が決定づけたと言える。マクロの観点では、各経済指標が弱含みとなり中国の第1四半期の経済成長は楽観視できない。そしてミクロの観点では、近頃相次いでデフォルト(債務不履行)問題が発生し、更に市場の慎重な雰囲気を煽っていることから、人民元安の予測も同時に高まる。為替相場下落の流れは絶えず加速しており、中国人民銀行はさほど市場救済措置に注力していないため、前段階の為替相場をただ一時的な調整と見なしていた投資家も次から次へと投げ売りの動きに向かっている。
外資が人民元の為替鞘取りを継続できなくなり、巨額の資金が国外への大移動を選択する可能性が高いと見られる。そしてちょうど議会を終えたばかりの米FRBも更にこの可能性に追い討ちをかけています。イエレンFRB議長は量的緩和(QE)終了の6カ月後に利上げを開始する可能性があるとし、これによってダイレクトに新興国市場の資金が米国へと回帰する動きが起こり、中でも真っ先に中国からの資金流出が見られている。
中国の状況をさらに掘り下げてみますと、国内不動産市場が深刻なダメージを受けています。2月も引き続き全体で不動産価格の上昇幅が狭まり、出来高も急落していることから、資金流出により、もうこれ以上の資産バブルを支えられない事は明らかで、バブル崩壊の可能性が高まっている。もし今後も情勢が悪化すれば、中国人民銀行は必然的に豊富な外貨準備高を利用して、為替相場の安定に関与すればこの連鎖反応を回避できるだろう。つまり、現段階で人民元相場のシーソーのバランス点は一体どこにあるのだろうか。
依然として、中国人民銀行が決定権を持つ。