世界の株式市場が下落
量的金融緩和策が推し進められる状況下で、2013年の先進国株式は大幅上昇を経験した。しかし、この上昇の勢いは続かず、今年1月には世界で大部分の先進国株式市場が大きく揺れ、おしなべて下落に転じた。
この調整基調は1月中旬から始まり、日本の株式市場の下落幅がやや大きく10%以上に、米国と欧州の株式市場でも5%の下落、香港の株式市場の下落幅は6%近くに、そして新興国市場でも2013年からの退勢が尾を引いて下落を続けている。株式市場に調整リスクが見られる状況下で、投資家たちは再びリスク回避へ注目。リスク回避先として注目される金先物相場では昨年末に1オンス1,200ドルを突破した後も上昇が続き、1300ドル近くまで上昇している。また、米10年物国債利回りでは3%から2.6%へ下落している。
世界同時株安の原因は、突き詰めると経済の先行きに対する市場の懸念によるものだ。年明けに発表された米経済指標では、住宅着工件数は大幅に9.8%減となり、新築住宅販売件数は市場予想を下回った。また、耐久財受注が4.3%減、ISM製造業景況指数が51.3に低下、非農業部門雇用者数も予想を下回った。各経済指標の弱含みが顕著となり、米国の住宅市場や労働市場及び製造業全体の回復ペースの鈍化が見てとれる。中国では、HSBC発表の中国製造業PMIが景気判断の目安となる50を下回っており、中国政府発表の製造業及び非製造業PMIも下落が続いている。世界の2大経済大国である米国と中国において経済指標が悪化したことで、市場では実際の回復スピードが予想を下回っている現状を突如として認識させられた。米国が量的緩和縮小をすすめる状況下では、実体経済の回復なくして株式市場の継続した下支えは不可能だ。つまり、今回の株式市場の下落は、市場の先行き懸念が招いた調整基調であり、理性的な反応であると言えるだろう。
2月に入り、株式市場は調整を消化し、徐々に落ち着き反発しつつありますが、これは、今回の市場の先行き懸念が招いた調整がほぼ終息し、経済情勢の変動リスクがゆっくりと消化されていることを物語っている。また、市場心理も改善し始めている。2月11日、FRB(米連邦準備理事会)のイエレン議長は就任後初となる議会証言の中で低金利環境を堅持する姿勢を示した。また、量的金融緩和(QE)の縮小ペースには確定した予定がある訳では無く、経済成長と労働市場の情況から判断し調整すると強調している。イエレン議長は現在の労働市場を依然不安定だと見ているものの、これまでの金融政策を維持するとしている。イエレン議長の議会証言から大きなサプライズは見られませんでしたが、経済が悪化していない事は十分に表明され、市場の信頼を後押しした。中国でも、最新貿易統計の増加が好調で、世界の株式市場に新たな牽引力をもたらしている。