米国非農業部門雇用者数
毎月第一金曜日に発表される米国非農業部門雇用者数(NFP:Non-Farm Payrolls)は、米労働市場を評価する最も重要な指標の一つである。今月(1月10日)発表のデータによると、米国は12月に非農業の新たな就業人数がわずか7.4万人増となり、予想の19.6万人を大きく下回った。
ここ3年来となる最小の上昇幅となったため、米労働力市場に対する先行き不安の再燃を引き起こしていた。異常気象が主な要因として挙げられるだろう。米国の大部分のエリアが20年ぶりの大寒波に見舞われ、交通や電力供給が深刻な被害を受けたことで、大量の就業希望者が寒波を避けるべく職探しを中断したと見られる。つまり、非農業部門雇用者数の減速は短期的な現象であると見られ、それ以上の意味を表してはいない。この先次第に気候が穏やかになり正常な生活になれば、労働市場は活力を取り戻すと見られることから、この先数カ月間のデータが非常に重要となるだろう。
本来は落ち着きを見せていた市場もさすがに雇用統計の発表後に大きめの変動が見られ、ドルインデックスは大幅下落し、国債利回り及び金価格は上昇、ダウ指数は翌月曜日(1月13日)に暴落となった。このことから、マーケットが就業状況の低迷をQE縮小進捗の懸念材料と見なしていることが明らかになった。米国がいつQE縮小に踏み切るのかが2013年で最も重要な焦点であったことから、2014年の焦点は縮小スピードの加速度に焦点が当てられるだろう。もし米国経済に継続した回復が見られない場合、QE撤退のペースは減速するか一時停止に至る可能性もあり、相反して加速する可能性も確か有るが。
今回の非農業部門雇用者数のデータによる株式市場の下落はおそらく前者の状況だろう。しかし実際には、経済の回復状況はその他の様々な指標も合わせて判断するべきであり、非農業部門雇用者数のデータはその中のたった1つに過ぎないのだ。
非農業部門雇用者数に失望した投資家も多いのではないだろうか。しかし今月はその他にも好調な経済指標が発表されまた。
米12月の小売売上高は、自動車などを除いたコアベースの売上高で0.7%増と、予想を上回ってここ10カ月で最大の増加率となり、消費がある程度回復していることが表れている。加えて、失業率は6.7%へ低下、5年来の最低水準となり、米FRBの掲げる目標値6.5%の金利引き上げ条件に近づいている。
これらのデータは、就業状況に好転が見られなくても、全体的な景気回復も同時に継続していることから、非農業部門雇用者数のの不調だけで状況が大きく変わることはない。そのため、この先QE縮小ペースが大きく変化する可能性は低く見積もられ、今後も毎月100億ドルの縮小ペースで実行される。市場が指数発表による材料を消化後、株式市場や債券及びドル指数はじきに落ち着くと見られ、米国経済回復の先行きは今後も楽観視できるだろう。