QE縮小は金融刺激策が終息
2日間の協議を経て、米連邦公開市場委員会(Federal Open Market Committee、 FOMC)は12月18日、毎月の債券購入規模を850億ドルから100億ドル縮小し750億ドルとする計画を決定した。
米国は2008年のリーマンショック以降、大規模な量的緩和政策(Quantitative Easing、QE)を行い、米連邦準備理事会(Federal Reserve)は米長期国債(Treasury Bonds)及び住宅ローン担保証券(MBS)を購入することで市場に大量の資金供給を行い、経済回復を支援してきた。そして5年を経た今、QE縮小の決定は、米国による金融刺激策が終息へ向かい始めた事を意味する
米国で大規模な量的緩和が進行する中、全世界では資産価値の高騰が続いた。そして今年5月、米FRBがQE縮小の意向を示したところ、たちまち市場は大きなインパクトを受けた。
米国債利回りの急上昇を受けて資金は次々と新興国市場から流出し、新興国の株式市場及び通貨を大幅に下落させてきた。この一件でQE縮小が国際市場全体に大きなインパクトをもたらすことが浮き彫りとなった。その後、市場参加者のQE縮小に対する準備が整ったことで、QE縮小に対する懸念がすっかり無くなったと見なされていた今年9月、FRBはFOMC後に打って変わってQE継続を宣言、再び市場にインパクトをもたらした。
総じて2013年下半期の世界の金融市場は、ひたすら一つのテーマにばかり注目が集まったと言える。その結果、QE縮小観測はもとより、米経済動向の些細な変動すらも、過大に解釈されてしまった可能性があるだろ。 2013年も間もなく終わろうというこの時期、QE縮小観測は後退しつつあった。しかし、FRBは大方の予想を覆し、QE規模縮小を決定。縮小規模が小さいため、流動性に大きな影響が出ることは無いものの、この決定には多くの意味が含まれいる。
まず一つ目は米国の安定した経済回復。11月の失業率がここ5年の最低水準となる7%へ低下、GDPも上昇を続けており、不動産市場でも安定回復が見られることから、FRBは2014年の経済回復に更なる自信を見せている。そして次に、QE縮小規模の小ささにFRBの慎重な姿勢が反映されている。決議公表の後、スポークスマンは政策金利を据え置くとした上で、たとえ失業率が目標の6.5%を下回ったとしても、インフレ率が上昇しなければゼロ金利政策を長期化するとし、これもまた市場の投資意欲を後押しした。
そして最後に、5年もの金融刺激策を終えるのは決して容易ではないということだ。一度停滞した米国経済はすでにQEへの依存度が高く、加えて過去に前例のない情況であるため、QE縮小によって経済や市場にどのような反応が起こるのかは見当のつけようがない。
FRBのこの重大決定は、知恵や勇気を必要とするだけではなく、米政府がこの先の米国経済を何としても正しい軌道に戻すという断固とした決意を表している。
客観的に見て、月100億ドルという規模の縮小が資金の流動性環境を大きく変えることはない。結局のところ、米国は今後もひっきりなしに紙幣印刷機を稼動させるため、QE縮小開始から半年を経過した頃には、すでにもう市場に過剰反応が起こる要因は無くなっているだろう。これは成熟市場である所以であり、FRBの望む着地点である。
今のところ、ユーロ圏と日本では再び景気刺激措置が始まっており、米国が真っ先にQE縮小に踏み切った事は、その他の地域にとって参考となる経験として蓄積されるはずだ。もし問題なく緩和策撤退が成功となれば、世界の金融市場の安定化にとって非常に重要な意味を持つだろう。投資を行う上でも、同様に参考となり学べる物がある。