金融市場に影響する経済要素として金利 / Interest rate
金利は通貨自体の需要と供給(Demand and supply of money)によって決定され、本質的には、おカネを保有することによって得られる対価です。市場金利(Market interest rate)が高くなれば、貨幣保有コスト(Cost of holding money)も高くなり、人々は所持することをやめ、預金や債券(Deposits and bonds)などの現金に代わるものを好むようになります。
金融政策と金利
金融政策(Monetary policy)で制御している国々では、中央銀行(Central banks)が通貨供給量(Money supply)を政策金利(Bank rate)で制御することになります。しかし、ここ香港ではリンクド為替相場制度(Linked exchange rate system: 聯系匯率制度)を採用しているため、資金の流入と流出(Inflows and Outflows of funds)に対応するには、政策金利(Bank rate)ではなく、香港の法定通貨である香港ドルの為替レートを通じて調整します。その結果、香港ドルは対米ドルで安定した為替相場(Exchange rate)を得る替わりに、通貨供給量(Money supply)を制御する権利、つまり金融政策(Monetary policy)を実施する手段を持たず、その権利を放棄したと言えます。
ちょっと一息コラム。時間は金なり複利のマジック
小さな利息の差が大きな違いに生じことがあります。これは複利(ふくりCompound interest)のマジックとでもいいましょうか。
複利とは元金だけでなく利息にも次期の利息がつくことを意味します。例えば毎月1%づつ利子がつく複利預金を考えてみましょう。まず、100万円を預金すると毎月1万円の利子がつきますが、そして次の月もさらに100万円の元金に1万円つくのと同時に、別途、1万円の利息に対してもさらに1%の1,000円がつくことなります。つまり、複利とは、すでに発生した利息まで元金として換算し含まれ、利息が加算され続けられるものです。初めの月の100万円の1%の1万円、つぎの月の1万円となり100万円が102万円に増えます。その増えた元金に対しても同じく利率が適用されることになります。
一方、単利の場合には元金が最初、契約時の額にしばられます。100万円の預金をすると100万円で元金は固定され、利息もその100万円のみとなり、複利のように利息の1万円、2カ月目の2万円には、つかないことになります。
このような違いは小さく見えるかもしれませんが、時間がすぎれば幾何学的に大きな数となってきます。
これを数値化したのが「72の法則」です。72の法則は複利体系において特定利子率を基準として、最初の現金が2倍になるまで要する時間を表してくれます。例えば、一年で10%の運用率があるとき72を10で割ると7.2となり、7.2年で元本が2倍になってくるということです。同じ利子率で単利体系の場合には、元金が2倍になるには10年にも及びますが、複利の場合に7.2年つまり、2.8年、およそ3年も早く元金が2倍になることになります。このように、複利と単利の差異は時間が長ければ、利子率が高ければ高いほどに、差が生じてきます。利子率の概念を理解できない人と理解できる人との差はとても大きいのがおわかりになったかと思います。
さて、投資する際によくあるのが、元金保証の有無を気にすることがあります。その代表的な商品が保険となります。保険に加入するときに「満期がきたら保険料の全額返還」という広告キャッチに容易に保険に加入してしまいます。しかし、これは損する可能性を極力、隠避するものであるといえます。たとえば100万を一括で支払う損害保険の場合、10年満期として満期後100万円が戻ってくるとします。次に、40万円で掛け捨ての損害保険があると、どちらがお得でしょうか。もちろん40万円は10年後、手元に戻ってきません。
大多数の人は100万円の満期返還型の保険を選択するのではないでしょうか?
年間7.2%の利子率を仮定し、複利運用の法則「72の法則」では100万円は10年後に2倍の200万円になっていたのですが、保険会社の元本保証を鵜呑みにしてしまったために100万円しか戻ってきません。一方、40万円の保険契約分の40万円を複利運用していたとしても10年後には80万円となり、結局80万円だけの損、100万円からみると20万円の損失が発生したことになり、前者の100万円と80万円の損失の2通りが発生することになります。
つまり、100万円を一括で支払う損害保険は10年後に100万円の損、40万円で掛け捨ての損害保険は80万円の損。
これは、あくまで年率7.2%の利子率を仮定にしていますが、発展途上国の場合に年率5%以上の利息のつく預金は存在すること、海外ファンドの運用率はそれ以上となります。
全ての投資の原則として適用されるのと同じように、保険を選ぶ際には元本保証の魅力に惑わされずに、本当のメリットがあるかどうかの見極めが、比較的に重要となります。
ちょっと一息コラム。銀行預金してもかえって損
ある政権は物価上昇率の目標値を2%に設定しました。GDPの成長率ではなく物価上昇率の目標を2%とするのは、具体的に何を示しているのでしょうか。そこで、金利というものを少し掘り下げて考えてみましょう。
おカネを貸すと金利をもらって、反対に借りると金利を支払うのはビジネスの世界では常識かと思います。おカネにも価値が存在しこれを現す概念が金利であります。たとえば、金利が5%から10%に上がれば、5%分おカネの今の価値が上がることになります。このように金利は金融市場をエンジンと見立てると、それを動かすガソリンの役割を果たします。
金利というガソリンに初めて火が入ったのは、おカネ自体に価値を付けたのが始まりとなります。物を売るとそれに対する対価をもらうように、おカネを貸すとそれに応じる対価として金利をもらう権利が発生します。おカネの価値は事実、法律で明記されており、日本では民法で法定利率として明記されています。
物価が上昇する局面において時が経つにつれ、おカネの価値が下がるのも金利が発生する要因の一つとなります。たとえば、今の100万円と来年の100万円の価値は異なるのは通常の経済状況の国では物価が上昇(インフレ)するからです。100円ショップの価格が今は100円でも1年後に105円に上がる、もしくは200円均一になってしまうということです。このようにおカネを借りた人は貸した人が損しないように最低限の5円を保障する基準となるのが金利となります。
概念を大まかにくくりましたが金利の種類ももちろん枝分かれし、まず、名目金利(Nominal Interest Rate)と実質金利(Real Interest Rate)から。名目金利(Nominal Interest Rate)は名のとおり、そのまま数値で表す金利で、普通銀行に1年定期預金の金利が5%であれば、これが名目金利となります。しかし、なけなしの100万円を銀行に一年預けたしても金利の5万円を稼いだという訳にいきません。これは、その1年の間に物価が上昇しおカネ自体の価値が下がるからです。
100円ショップが価格を改定し105円となることが5%の物価上昇したことになり、このようにすべての物価が5%上昇するとなるとおカネの価値はその分下がることになります。つまり、今の105円が一年後には100円と同じ価値になるということです。結局、せっかく定期預金100万円を組んで、一年後に5万円の金利を獲得したとしても、これはただ、おカネの価値を保全したにすぎず、追加として稼いだと言えません。言い換えるとおカネの価値を保持しただけとなり、このとき、実質金利(Real Interest Rate)が0であったと言います。
この実質金利を求める方法はとても簡単で、若干の誤差がありますが、名目金利から物価上昇率を差し引けば、実質金利がを求めることができます。名目金利が5%であるが物価上昇率が4%とすると実質金利は1%にしかならず、物価上昇率が10%と大きく上昇していまうと実質金利は-5%となり銀行におカネを預けるイコール損をする行為となるのです。だからといっておカネを自宅金庫に保管していても正しいとは限りません。名目金利の恩恵でさえ享受することができず、物価上昇率が10%の状況では物価上昇分の10%が丸まる損をすることになります。そうであれば、おカネを銀行に預けるのが比較として正しい選択であると言えます。
日本政府の物価上昇目標を2%と定めましたが、仮に上手くコントロールでき2%で収まったと仮定します。さて、三菱東京UFJ銀行の定期でいま現在、年0.025%の金利(100万円1年定期預金でたった250円の名目金利、 商品名:三菱東京UFJ銀行の「スーパー定期」がつきますので、そこにおカネを預けている人は来年一年後の大晦日には、いくら損をしているのでしょうか?
答えは1.975%のマイナスを記録します。100万円の定期預金であるとマイナス19,750円、1,000万円の定期預金であると掛ける10のマイナス19万7,500円の実質金利による実質損害が発生することなります。
最後に、金利でもうひとつ考慮しなくてはならないことが、税金(TAX)となります。政府が企業や個人がおカネを稼ぐ分の一部を徴収するように、金融所得(Capital Gain)に対しても税金を徴収します。現在、香港では0ですが、日本では利子所得は、所得税として20%が徴収されます。さきほどの三菱東京UFJ銀行の例で1,000万円であると2,500円の名目金利がつきますが、2,500円から更に2割の500円を国家が源泉徴収(天引き)し持っていってしまいます。
このように見てみると普通銀行に預金するのが本当に馬鹿らしくなりそうですが、この金利も物価のように上下を繰り返します。ここにも市場原理が働き、市中におカネがたくさん流れると金利は下がり、おカネが不足すると上がっていきます。言い換えると、通常、世間でおカネが不足しているとおカネを貸す側はもっと多くの対価を要求し、逆におカネを借りる人はもっと多くの対価を支払ってまでも、おカネを借りなければならず金利が上昇することになります。