不動産価格の反落
香港の九肚山(Kau To Shan)高級住宅用地を、俊和発展(チュンウォデベロップ、00711.HK)が27億香港ドルで競り落とした。取引価格は市場予測の最低水準で、床面積1平方フィート当たりの単価(Price per square foot)は、市内の多くの高級住宅用土地の中で最安値となった。
用地には中小の不動産業者からも入札があったことから、大型不動産業者が慎重な値付けを行い、今後の市場に保守的な態度を保っている事が反映されている。これは、米国が緩和策撤退を宣言する可能性及び不動産市場が様子見となっている現状と関係がある。事実上、長江実業(チョンコン、00001.HK)は少し前に低い販売価格で新築物件を発売しており、すでに大型不動産企業が先行きを楽観していない事実は、以前に言及した通りだ。
九肚山高級住宅用地の取引で1平方フィートあたりの単価が下落したことは、地価の下落を反映しており、この状況下で不動産市場の調整が始まらないとしても、デベロッパーにしてみれば価格を再び引き上げるのは非常に難しくなった。
地価の下落に伴い、新築物件の販売価格も引下げ圧力を受ける可能性があり、香港の不動産市場がピークに達した可能性が高いことを意味する。現在、中古不動産市場の取引はこう着状態で、続けざまに価格の低い新築物件が発売されていることから、中古不動産の所有者は焦燥感から更に低価格で不動産を売却する可能性があるため、仮にそのような情況になれば不動産市場は本格的な調整期に突入するだろう。
量的緩和策撤退の気配が迫る中、米国債利回りは上昇に転じている。国債利回りの上昇に伴い、香港における不動産の賃貸収益率は次第に魅力を失っており、この先香港の不動産市場の調整圧力が強まると見られる。
香港経済の良し悪しは、不動産市場の盛衰が決定的な影響力を持ち続けてきた。もし不動産市場が調整となれば、香港経済の悪化は免れ難く、香港政府は多くの「手厳しい施策」で不動産市場の冷却化を図っており、その効果は明らかだ。不動産市場冷却のための調整は経済に打撃を与えてしまうため、政府は調整となる前に徐々に各種の「手厳しい施策」を緩和するか、撤回しなければならない。
効果的に不動産市場問題に対処するには、香港政府は周到な準備が必要だ。さもなくば、非常に深刻な結果を招くだろう。
考えてみると、もし政府が急騰・暴落を起こす前に適切な政策を実施できた場合、これから数年の不動産価格の急激な下落はないであろうが、今、差し迫って、不動産価格の暴落リスクを懸念する必要はそこまでないだろう。