勢いを失った新興国市場
ここ数回の記事にて、世界金融危機を経た後の欧米等の成熟国家経済について述べてきた。株式市場のパフォーマンスで見ると、新興国市場(Emerging Market)と比べて魅力的な市場となっており、多くの投資家からの関心を集めている。
予測は現実と合致しており、HSBCが近日公表したデータによると新興国市場指数(EMI) は49.6へ下落、09年4月以来初めて50を下回り、新興国市場経済が減速傾向にあることが反映されいる。
ここ数年高騰したBRICs4カ国ですが、もうすべて「見紅」(赤字を被る)状態。先月の中国総合産出指数は前月の49.8から更に49.5へと下落、更にブラジルは増加となっていた51.5から減速を象徴する49.6へと下落しているほか、インドは48.4、ロシアも48.7へと下落し、2009年7月来の最安値を更新した。
新興国市場の経済データは弱体化しており、欧米国家が次第に回復する現象と相反している。先進国においては、特に金融的災害を経験した米国が今なお勇ましく世界のリーダーとして君臨し、紙幣の量的緩和政策の実施や撤退が世界の金融市場に余波を与えていることがわかる。
チャートを見ると、09年から現在にかけて米ダウジョーンズ指数(A線)と英株価指数FTSE100 (B線)の記録はいずれも上昇幅がずば抜けているが、相反してインドボンベイSENSEX30指数 (C線)と上海総合指数(D線)はそれぞれ-3.86%および-14.79%の下落幅となっている。
「株式市場は実体経済よりも数年先行する」とか、更には「株式市場は景気温度計」などと言われているが、近日新興国市場が市場予測を下回る経済データを発表したことから、こういった話の信憑性が更に高まった。
株式市場に展望的作用があることのほかに、より簡単な賢いやり方として、将来の世界経済の動きを予測できる方法がある。<
この方法とは、全世界に展開する大企業を見てみる、ということだ。例えばHSBC香港上海銀行を見てみると、今年度の中間業績発表があり、欧米地区が暗雲を脱し素晴らしい成長を続けており、アジア地区と比べずっと好成績となっている。
HSBC銀行アジア太平洋経済連席主管の範力民(Frederic Neumann)氏の指摘によると、新興国市場が現在直面する主要なリスクとして、製造業の周期的縮小およびサービス業の衰退、そして最終的に雇用市場の弱化を招くと指摘している。
中国・ブラジル・ロシア・ポーランドや韓国などの国家を例にとると、現地では製造業の人員削減がすでに始まっており、サービス業の雇用の伸びは鈍化しさらに悪化すると、消費意欲がダメージを受け当該地区の景気に暗雲が広がるだろう。