7%の保持は中国に必要
中国の李克強首相が明言しているところ、「ボトムライン論(底線論)」は中国経済成長率が7%の「ボトムライン」を下回らないようにするというもので、彼の言論から中国政府による「保七」(経済成長率7%台保持)の政策実施に対する市場の期待感が増し、中国・香港の株式市場はともに急反発となった。
最新の首相演説は、中国政府が経済成長が更に減速することを許容しているという1つの重要な情報をもたらすこととなった。ここから推測するに、この先、経済成長率が低くとも7%かそれ以下にならない限り、中国政府が早急に景気刺激策を実施する可能性はかなり低いということだ。上半期に中国経済は年率7.6%増となっており、「ボトムライン論」の7%を遥かに上回っている。こういった状況で、中国政府による今すぐの経済振興に期待を寄せてしまうのは市場の早合点かもしれない。事実、首相は中国政府が大規模な政策を打ち出す可能性はないと述べている。
指導者の発言は株式市場の短期的な投資マインドを刺激できるが、持続的上昇トレンドとできるか否かは、中国政府が実質的な政策を打ち出せるか否かにかかってくる。中国本土の株式市場は景気対策の影響をひたすら大きく受け続けており、実質的な政策がもし打ち出されなければ、失望へのマインドからすぐさま株式市場を急降下させてしまう。
過去半年以上、マーケットは何度も中国政府の景気刺激策に期待を寄せてきたが、いずれも不発に終わり、このためA株も確実な上昇トレンドへの回復方法を見失っていることから、歴史が繰り返されることへの警戒感は必要だ。
HSBCが発表した7月のPMI(中国製造業購買担当者景気指数)速報値は47.7となり、11カ月ぶりの最低値を更新した。
中国本土の制造業が引き続き厳しい局面にあることを反映している。発注書数の減少と、在庫数増加の影響を同時に受け、製造業セクターでは勢いが弱まり続けている。銀行業セクターの整備や、立ち遅れた生産能力の淘汰等、多方面の構造改革を行っており、加えて中国政府自体も厳格な支出削減政策を実行している。このため制造業セクターの現状の衰退はまだしばらく継続する可能性が高い。中国経済は今まさに岐路に立たされており、対立・チャンス・チャレンジが同時に立ちはだかっている。
どのように各方面のバランスを保っていくかが、この先中国経済が発展を維持できるか否かのキーポイントとなるだろう。