経済に立ちはだかる試練
中国本土の6月のCPI(消費者物価指数)は前年同月比2.7%上昇となり、市場の予想中央値よりも0.2%高かった。
良い見方をすれば、インフレ率2.7%は安定的であると言え、市場予測の上昇幅を上回ったことで消費意欲が刺激され、弱化した景気にプラスに働く。悪い見方をすれば、インフレ圧力によって中央銀行による「放水」(金融緩和)の可能性が低くなると予想され、中国と香港の株式市場のパフォーマンスにとって悪影響となる。
発表後、中国本土の株式市場はやや軟化しており、香港株式市場に至っては前高後低となり、市場のトレンドに影響を与えているのは依然として負のマインドであることが見てとれる。
CPIが予想を上回ったものの、PPI(生産者物価指数)では市場の予想通り、昨年同月比でマイナス2.7%となり、マイナス値が続き中国本土における原材料の需要の減少を反映しているが、景気収縮リスクの減少はまだ見られない。また、中国本土が以前発表したPMI(購買担当者指数)も、同様に見られない。
景気下降に面して、中央銀行は金融緩和を行うべきところだが、インフレ圧力による制限は予想を大きく上回り、中央銀行による「放水」の余地も可能性もずいぶんと小さくなってしまった。つまり、中国本土の現在の経済情勢は非常に複雑化しており、中央政府及び中央銀行がどのように対処していくのかが市場の最大の関心事となっている。
一方、中国本土マーケットニュースによると9月に再び「流動性逼迫」に陥ると言われており、9月の資金需要に対処するべく、預金金利を高く設定して預金残高の確保に努める大型銀行も見られる。
中国本土が再び「流動性逼迫」に陥ることは、筆者は決して驚くことではないと認識している。なぜなら中国本土の規制当局が今まさに銀行セクター改革を実行中であるため、一連の改革において、市場資金の流動性が逼迫することは避け難いのである。
並行して銀行にローン金利の引き上げを可能としない限り、銀行は預金に高金利を設定する方法で資金の確保を行うこととなり、銀行間の金利格差の圧力上昇を招いて、将来的な業績に悪影響が出ると見られる。米FRBの緩和策縮小の可能性が日増しに高まっているにも関わらず、中国本土の景気は下落トレンドとなっており、資金が中国から米国へと流出し、流動性逼迫に拍車をかけるに違いない。
総じて、中国はインフレ問題と同時に「流動性逼迫」や景気減速の懸念など、実に多くの試練に直面している。将来の展望が明るくない状況下で、中国・香港の株式市場が好転する可能性は低い。