銀行セクターの改革は痛みが伴う
近頃、中国の市中銀行では流動性の逼迫(ひっぱく)が起こり、中国の翌日物インターバンク・レート(銀行間取引金利)が2桁台まで引き上げられた。
背景にある原因については諸説入り乱れており、ある者は中国内の各銀行による金融商品取扱いの放任及びシャドーバンキング(影の銀行)業務に対する中央銀行(中国人民銀行)の厳重な処罰の結果であると指摘し、またある者は上半期末の調整のしわ寄せが原因だと言う。
従来では、半期末調整の際に金融引き締めが行われることはよくあり、インターバンク・レートが少し上昇するのはめずらしくない。しかしここ最近のインターバンク・レートの変動は極めて異常であり、上半期末の調整だけが金利の大幅上昇となった原因ではないと、見るのが自然だろう。
中国本土の流動性が逼迫しているにも関わらず、中央銀行が短期内に大規模な「放水」(金融緩和)を実施する意欲は無い様子だ。言い換えれば、インターバンク金利が高水準を維持する情況はまだ一定期間継続し、中国国内銀行にとってマイナス要因となる可能性が高い。
中国の国内銀行における「水不足」を目の当たりにしても、中央銀行は「放水」しないことに固辞しているわけだが、今回の件で、中央銀行が中国本土の銀行セクターの改革に対して強い気持ちがあると示している。事実、中国本土の信用拡大ペースの加速はすっかり中国経済発展の障害物となっており、中でもシャドーバンキング(影の銀行)及び資産運用商品(Wealth Management Products、WMP)販売の問題は市場の関心を集め始めている。
問題悪化による金融危機の勃発を回避するべく、中央銀行の銀行業整備に向けた迅速かつ厳格な対策に一定の理解ができる。しかし、筆者が確信するところでは、銀行セクターの整備をすればするほど、中央銀行は決して各銀行に不測の事態を起こさせるわけにはいかなくなる。
すなわち、近年シャドーバンキング業務及び金融商品取扱いに重点を置いて発展してきた諸銀行が十分に懲らしめた後には、中央銀行が「放水」を行う可能性があるのだ。注意するべきは、たとえ中央銀行が今後「放水」を実施したとしても、中央銀行の銀行セクターの整備に対する決心が揺らいだ表れというわけでは無く、レバレッジ・リスクを払拭することが将来的な改革の核心的な目標となるということである。
金融危機の後、それぞれ主要な経済セクターにおいて、金融市場に衝撃を与えたレバレッジの脱改革が進められた。それが教訓となるよう、銀行セクターの整備の過程において中国本土の金融市場に激震が走るのは確実となり、経済の下振れリスクが次第に高まっていると見られる。