金利引上げで市場に警鐘
日経平均株価は5月23日に下げ幅1,000ポイントを超える大暴落、翌24日の振れ幅も1,000ポイント以上となり、日本の金利上昇は日経平均株価の大変動を引き起こすトリガとなってしまった。
日経平均の暴落後、政府筋は株式市場及び債券市場をサポートすると発表しており、中でも日銀総裁の黒田氏は経済が好転しつつある情況において、金利が1~3ポイント上昇しても金融システムの不安定にする可能性は大きくないとしている。
黒田氏の発言について、筆者は少し待ったをかけたい。日本経済が無制限の量的緩和によって回復できるかどうかは依然として大きな疑問符が残っている。連月の円安化を経て、日本経済が好転するのは少しも不思議ではないのだが、これは決して日本経済の回復と長期的な景気拡大が始まったことを表しているわけではない。
日本は深刻な財政債務問題を抱えているため、円安化の継続によって債務危機が一触即発となる可能性が高まっている。過去数週間のうちに日本の長期金利(10年国債利回り)は1%まで上昇し、累積上昇幅は倍となっている。国債利回りが1%となった影響ですでに株式市場が急落してしまったことから、もし利回りの上昇が3%にまで達してしまった場合、株式市場自体がどうなってしまうのかは想像に難くない。
金利上昇が引き起こす不確定要素の発生は日本だけに留まらず、10年米国債利回りも2%を突破し多くの関心を集めている。
米国債利回りの上昇は米国内の金利引き上げの可能性を高めており、米FRBが金利を引き上げを早める可能性がある。
カレンシーボード制(Currency Board)の下では、ひとたび米国が金利を引き上げとなれば香港は追随するしかない。香港と米国の金利動向は密接に関係しているため、米国債の金利変動が香港株式市場にもたらす影響はほかの株式市場と比べてより大きなものとなる。
低金利な経済環境は、近年の現地不動産市場に好景気をもたらしているため、金利の上昇は不動産市場を調整期へと追いやる可能性がある。その時が来てしまえば、経済全体及び株式市場も否応無しに下方圧力を受けることになる。
日米の国債利回りの上昇ですでに金融市場には警鐘が鳴り響いており、近月における両株式市場の上昇の勢いはしばし一段落ついたと言える。
日米の中央銀行が金利上昇によるダメージを確実に認識しているため、将来的に再度金利引下げ措置を採択する可能性が極めて高い。しかし、もし円安傾向と米国の金融政策撤退の情勢が変わらなければ、中央銀行による利下げの動きは短期的な効果しか生めず、市場はひたすら国債利回りを押し上げるだろう。