量的緩和策撤退前に準備
米国経済は上昇傾向を維持しており、今年の夏にはFRB(米連邦準備理事会)が債券購入規模を縮小する可能性ありと予測する者もいる。
FRBがいつ政策撤退を行うのかは失業率及びインフレ率の2大指標によって決定されるわけだが、現在に至るまで米国の失業率及びインフレ率はそれぞれ依然として目標の基準値に達していないため、FRBが短期の内に量的緩和を撤退する可能性は低い。
上述の2大指標はさておき、ベン・バーナンキ氏が次の任期も続投するかどうかも、同じく撤退のスケジュールに影響してくる。バーナンキ氏の任期は来年初めまでとなっており、市場は氏が退任するだろうと予想している。新旧の議長が入れ替わる際の不確定要素を回避すべく、バーナンキ氏が任期内に現在の政策を変更せず維持させる理由は大いにあると言える。バーナンキ氏の再任が決定しない限り、政策撤退の重大任務は次の新たなFRB議長の決定を待つことになるだろう。
短期間は政策撤退の可能性は高くないものの、投資家は撤退に備えて心構えをしっかりと整えておくべきである。なぜならば、米国の経済は着実に好調を維持しているだからだ。
もしこのまま最近の好調なトレンドが続けば、撤退の日が必ず訪れる。金融市場にもたらす撤退のショックを和らげるため、行う前に、綿密にFRBは周到な準備を行う必要がある。
近年の量的緩和措置は金融市場に強大なサポートをもたらしたが、ひとたび撤退となれば、債券価格の需要減少による下落は避けがたく、問題となるのは下降トレンドがゆるやかとなるのか急激となるのかだ。事実上、撤退が騒がれる状況の影で近頃の米国債はすでに弱化を見せており、10年債利回りが2%近く上昇している。
もし債券価格がゆるやかに秩序を保って下落する場合、資金は株式市場に流れ、米国株式市場に有利に働く可能性が有る。しかしもし債券価格が急落した場合、金利は急上昇し、経済活動は否応なしに圧力を受け、株式市場も連動して顕著に調整傾向が表れてしまう。
米国債金利の大幅上昇による影響は米国本土だけに止まらず、世界の経済及び世界の金融市場へと波及するだろう。いかにして上述の事態を回避するのか、肝となるのはまさにFRBが撤退の準備をいかに周到に行えるかどうかにある。
今から撤退の直前に至るまで、FRBがいつでも「撤退発表」してくる可能性を想定し、マーケットが心構えをしっかりと整えられる十分な時間を確保できることをのぞむ。