欧米各中央銀行に不穏な気配
市場の予想通り、ECB(欧州中央銀行)は0.25%の利下げを行い政策金利がついに0.5%となった。
ユーロ圏の金利はとうに最低水準であったため、利下げが再び行われてもユーロ圏の経済全体に大きな刺激を与えることはできない。しかし、財政問題を抱える国々や企業にとって、債務はあまりにも重くのしかかり、わずかな幅の利下げであっても財政圧力の緩和が見込めるのだ。
ECBは将来的にマイナス金利政策に踏み切る可能性があるとしており、言い換えると、中央銀行はこの先もう一歩進んだ利下げを行う可能性もある。
マイナス金利政策の実施の目的は、預金者に投資あるいは消費に預金を用いるよう促し、経済を刺激することである。しかし、預金利率はユーロ圏の人々の投資及び消費意欲に影響をあたえる要因の1つにしか過ぎず、雇用が安定的かどうか、また収入を維持できるかどうかも人々の投資及び消費意欲に対し全面的に影響がある。
周知のとおり、ユーロ圏には緊縮政策を実施中の債務問題国家を抱えている。これら関連国家の失業率はきわめて高い水準を保っており金利がマイナス利率となるかどうかは根本的に重要とならない。
欧州ではECBが利下げを、そして米国ではFRB(連邦準備制度理事会)が債券購入規模増減の声明を発表したわけだが、欧米の各中央銀行の政策から欧米経済が苦境に陥る可能性を感じずにはいられない。ECBは10カ月ぶりの利下げとなったが、現地で新たな利下げ周期が始まったことを暗示している。
なぜ再び金利引下げを行う必要があるのだろうか?少し考えてみても良いだろう。
米国では、過去数カ月における市場の関心事はFRBが金融政策の撤退を行うかどうかだった。しかしFRBは声明の中で撤退どころか債券購入規模の拡大が可能であることに言及、これはもうFRBが債券購入規模拡大の「ゴーサインを出した」という意味合いだ。
同様にもし米国経済が安定しているならば、FRBが債券購入規模拡大について表明する必要は根本的に無い。 株式市場からしてみれば、欧米の各中央銀行が再び経済政策を打ち出すことはもちろん好材料なのだが、政策の実施は経済が再び苦境に陥る意味合いも暗示しているため、急上昇を見せた後、株式市場の急落を見るかもしれない。