中国経済は政府に依存
温首相は任期最後となる政府活動報告を読み上げた。そこで今回筆者が重点部分を取り上げて検討してみる。皆様にとってこの先の中国経済政策への理解に役立つことを願う。中国政府は今年の経済成長7.5%及びインフレ目標を3.5%にそれぞれ定めた。前者は昨年より0.3ポイント低くなり、後者は2012年と比べて0.9ポイント高くなった。経済成長目標7.5%は市場の予想通りだったものの、成長率が昨年より低いことから、今年の中国本土経済に下振れリスクが出てくる可能性が高い。インフレ面では、目標の3.5%は昨年の数値より遥かに高く、中国政府が今年のインフレ圧力が上昇すると予測していることを反映している。
政府活動報告の中で、温首相は「積極的な財政政策」と「落ち着いた(穏健)金融政策」で経済発展を推進すると言及した。積極的な財政政策の採択とは中国政府が経済発展への参与拡大を意味しておりその一環として、インフラ建設、環境保護、内需などでより財政出動となるだろう。また経済の安定と成長を確保する為、温首相は財政赤字を12年の財政赤字目標は8000億元から2013年の財政赤字を1兆2000億元へと大幅に50%引き上げるとしており、積極的な財政政策実施の準備を整える為であることは明らかだ。
金融政策面において、温首相は「落ち着いた(穏健)」といった用語で形容している。穏健には、変化がさほど大きくないという意味がある。言い換えれば、金融政策において、中国人民銀行は今年「不変応万変(どんなに多くの変化があっても不変の姿勢で対応する=現状維持)」の戦略をとる可能性が大きい。
政策金利や預金準備金率は現状維持される可能性が極めて高く、レポ取引やリバースレポ取引が通貨供給を調節する主要な措置となるだろう。当然、万一インフレ予測が上回ったり不動産市場の加熱がコントロールできなくなった場合は、人民銀行が利上げや預金準備金率を引き上げる可能性が出てくる。
この先数年は中国経済にとって、経済事態の質を向上させ中国長期発展の持続性があるものに出来るかどうかの非常に肝心な期間となるはずだ。経済の構造変化の過程で、すでに存在している問題や矛盾は確実に深刻化しており、更なる問題や矛盾が出てくるだろう。もし失敗すれば、中国経済は困難な局面に追い込まれてしまうはずだ。問題と矛盾の解決ができるか否か、その鍵は中央政府が更に深い段階での改革を行う決心があるかどうかにかかっている。