台風災害が米大統領挙に変数をもたらす
台風の影響で熾烈な米大統領選挙活動に混乱が巻き起こった。両党の立候補者にしてみれば、この台風がもたらしたものはピンチでもあり、チャンスでもある。
報道によれば、今回の台風はニューヨークに深刻な被害を与えたとし、世論において遅れをとっているロムニー氏がこの災害を追い風に、オバマ氏の防災および被災者救済の能力を非難材料とする可能性がある。
一方のオバマ氏も、全力を挙げて被災者救済にあたること必至であり、被災者救済の功績が有権者の最終的な投票心理に影響を与えられる可能性がある。台風が行き過ぎ、ロムニー氏およびオバマ氏はたて続けて被災者救済活動を行うと予想されており、これらの活動は両者にとって好感度アップへの機会となり、両候補が民衆の期待値を自分にむけさせる絶好のチャンスとなる。これらのことから、台風は米大統領選の状況に変数をもたらしたことが理解できる。
一般的に、オバマ氏再選となる方が金融市場や投資マインドにとって有利であると見られている。その原因は、もしロムニー氏が壇上に上った場合、現在の資金氾濫の局面は逆に進む可能性があり、超金融緩和環境を創り上げてきたベン・バーナンキ氏の居場所も無くなってしまう。ロムニー氏は行き過ぎた現在の貨幣政策を批判したことがあり、加えて彼は大統領当選の際にはベン・バーナンキ氏を再任させることはないと明らかにしている。言い換えれば、ロムニー氏が壇上に上がるようなことがあれば、FRB(連邦準備制度理事会)に圧力をかけ、低金利環境と無期限の過剰な量的緩和措置をさっそく終わらせるように要求するはずであり、投資市場にとって金融緊縮措置は間違いなく悪いニュースとなる。
米ドルが長期間弱みを積み上げた原因の一つとなったFRBによる絶え間ない紙幣増刷をロムニー氏は賛成しておらず、すなわち彼が壇上に上れば米ドルが大幅に上昇することを意味しており、その時がくれば金相場は大幅に調整される運命と言えるであろう。周知のように、米ドルは主要なキャリートレード(Carry Trade)通貨であり、米ドルが強気に転ずれば全世界の金融市場に嫌気がさす面がある。当然、ロムニー氏の現在の主張は野党の立場から発せられているものであり、いったん当選してしまえば、主張は大きく変化し、オバマ政権と大差ないものに変わってしまう可能性がある。
米大統領選まで一週間不足らずとなった。選挙の状況がはっきりとせず見通しが立たないことから、金融市場における投資の雰囲気は短期間で徐々に慎重に転じていくと予想。